就職活動の長期化を是正するため、経団連は昨年3月、倫理憲章を改定。シューカツの開始時期を大学3年生の10月から、12月へと遅らせた。だがそうした動きに関係なく、水面下では早い時期から優秀な人材の獲得合戦が繰り広げられている。

 就職支援のエキスパートで、『〈就活〉廃止論』(PHP新書)の著者である佐藤孝治さんもこう話す。

「企業が欲しいと思うような大学生の出現率は、100人募集して5人、つまり5%というのが経験則です。採用の現場では、この5%を巡って熾烈な獲得競争が行われているのです」

 実際、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、学年にこだわらない採用の一環として、今年は現役の大学1、2年生約10人に、卒業後の入社を認める内々定を出している。"スーパー大学生"を早めに確保し、卒業までの間、ユニクロの店舗でアルバイトしてもらうことで、入社までに即戦力として育成するのが狙いだ。

 同社広報チームによれば、学生はいずれも目標や目的意識がしっかりしていて、コミュニケーション能力も高いという。他社に流れて入社してくれない可能性はあるが、「そこはやむを得ない」と割り切っているそうだ。

"スーパー大学生"を獲得するため、破格の好待遇を打ち出した企業もある。

 ソーシャルゲーム運営大手のグリーは、来春の新卒採用の大学生と大学院生について、実績と能力に応じ、最大で年俸1500万円支払うことを募集要項に明記した。グリーが狙うのは、新卒でも即戦力になりうる学生だ。

「かつては採用してから1、2年かけて人材を育てる余裕が企業にあったため、いい大学に入っておけば就職はなんとかなりました。しかし競争環境が激化し、企業は即戦力になる優秀な人材を新卒にも求めるようになった。その結果、一部の学生だけが、優位に働き先を選べる時代になってきたのです」(前出の佐藤さん)

※週刊朝日 2012年9月21日号