8月初め、家電メーカー各社は今年度末の決算予想を大幅下方修正する動きが目立った。ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、家電メーカーが衰退した理由は家電エコポイントにあると指摘する。

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 それにしてもなぜ、世界に冠たる日本の家電メーカーが、これほど短期間のうちに衰退したのか?

 家電エコポイントなどの消費刺激策は消費を先食いするだけで、施策が終わったり、効果が一巡したりした後には反動で物が売れなくなる、というのは一般的によく言われることだ。しかし、問題の本質はここにはない。副作用がこれだけなら、前倒しされた消費の落ち込み期間を我慢すればいいだけの話だからだ。現在、日本の電機メーカーが直面している事態はより深刻なのだ。

 ここ数年、日本の電機メーカーは、映像機器の分野で新製品開発の努力を放棄していたように見える。そんな努力をしなくても、国内でかつて経験したことのないほどの台数のテレビが売れる。それゆえに新製品開発に知恵を絞り、生産ラインに新規投資をするモチベーションは生まれない。また、円高で輸出の収益環境が悪化している中で、国内で飛ぶように商品が売れているのに、あえて海外で勝負する必要もない。

 ここに、たった数年で日本の家電メーカーが、海外企業の後塵(こうじん)を拝することになった原因がある。家電エコポイントで国内での販売と利益を保証されたがゆえに、世界的なボリュームゾーンである新興国の中産階級向け新製品の開発が遅れ、国内で「エコポイント祭り」が終わった瞬間に、世界で勝負できない体質だけが残ってしまったのだ。

※週刊朝日 2012年9月7日号