公共電波の無駄遣いは、地上波だけではない。特にキー局のBS(衛星)放送では、唖然(あぜん)とする番組編成が行われている。

「ウチは通販番組が1日5時間を超す日はざらで、社内でもBSは『通販専門局』などと揶揄(やゆ)されています。自前の番組は、安上がりの『旅番組』や『紀行』ものくらい。後は韓流ドラマで何とかつないでいるのが実情です」(キー局社員)

 放送に詳しいジャーナリストの坂本衛氏がこう指摘する。

「しっかりカネをかけているNHKや、スター・チャンネルやWOWOWといった有料放送は、それなりに視聴者をつかんでいます。一方でキー局のBSは、番組制作費が地上放送の10分の1程度と言われ、安っぽい番組しか作れないし、タレントもブレーク前か旬を過ぎた"2軍選手"しか起用できない。ろくなコンテンツがないのは当然です」

 もとをただせば、1987年、小笠原諸島などテレビ電波が届かない地域を解消するために、NHKがBSlをスタートさせたのが衛星放送の始まりだ。だがいまや、難視聴地域の解消はほぼ達成された。テレビ局に期待されるのは、視聴者のニーズにきめ細かく応える、多様で質の高い番組作りのはずだ。

「例えば、この救いようのない政治状況の中、テレビ朝日の『ビートたけしのTVタックル』やNHKの『日曜討論』は、何年も同じスタイルのままなのだから、BSでは、それに代わる形態の討論番組を作るとか、地方局で埋もれている優れたドキュメンタリーを発掘して流すなど、新たなムーブメントを起こす努力が必要。それができなければ、キー局のBSは『失敗』という結論で終わるでしょう」(坂本氏)

※週刊朝日 2012年8月10日号