ジャーナリストの田原総一朗氏は、ニューヨークを訪ね、アメリカの原発政策について話を聞いた。すると、日本人にとっては衝撃的な事実が明らかになった。

*  *  *

 アメリカの原発政策はどうなるのか、と問うた。相手はエネルギー専門の人物である。

「アメリカの企業は、実は原発にはほとんど興味がない。原発を今後造ることはないですよ」

 こともなげに、そう答えた。そこで、福島原発の事故で原発の怖さを感じたからか、と開いた。

「そんなことで騒いでいるのは日本だけ。関係ない。実はシェールガスとシェールオイルを合わせた埋蔵量は、確実に百数十年分はある。それに安い。高くて、問題になりがちな原発の時代は終わりです。ロシアや中国のように造りたい国に、無理にやめよとは言いませんがね」

 衝撃的な話であった。私は帰国して、何人ものエネルギー専門家に確かめてみた。専門家たちの間では、そのことが話題になりつつあるということであった。

 日本での原発とエネルギー問題の扱われ方は、どうも的を外しているのではないかという気がする。

※週刊朝日 2012年8月3日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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