福島第一原発で作業員として働くジャーナリストの桐島瞬氏からルポが届いた。そこには過酷な作業現場の実情と、東電社員がいかに現場作業員を軽んじているかが克明に綴られていた。

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 東電は今年4月、免震棟の一部を「管理対象区域」から「非管理区域」に変更したと発表した。徹底した除染で、基準を下回る汚染レベルにしたと世間に知らせたのだ。実際、床から1.5メートルの平均線量は、1月10日は1.59マイクロシーベルトだったが、5月22日には0.43マイクロシーベルトまで下がっている。室内をきれいにしました。もう、作業員がここで大きく被曝する危険性はありません----と言いたいのだろう。だが、事はそう簡単ではない。

 ここに隠された巧妙なゴマカシを見ると、「さすが、東電」と言いたくなる。

 発表資料をよく見ると、「免震重要棟の一部を非管理区域として運用」と書かれている。「一部」がクセモノである。では、「一部」とはどこか。

 実は、2階なのだ。除染したのは2階だけなのだ。東電社貝の専用スペースである2階だけを除染し、作業員が利用する1階は、依然として高い汚染度のまま放置しているのだ。1階はどの程度汚染されているのか。放射線管理員が解説する。

「免震棟の1階に1縲鰀2時間いるだけで、約0.03ミリ被曝します。1カ月に20日間働くと約0.6ミリ、1年で7.2ミリシーベルトも浴びてしまう計算です。そんな場所で食事や休憩をしなくてはならないなんて、バカげています」

 別稿の冷蔵庫の件でもわかるが、東電社員だけが恵まれた環境に身を置き、協力企業に属す作業員たちの環境は過酷なまま……。東電はこの現状に疑問を感じないのだろうか。

※週刊朝日 2012年8月3日号