もはや、「いじめ」という言葉では収まらない事態になってきた。

 大津市の市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が昨年10月に自宅マンションから飛び降りて自殺した事件のことだ。

 2月に両親が市や加害生徒とその親に損害賠償を求め起こした訴訟で、加害者と名指しされた生徒は3人。今、どんな思いで過ごしているのだろうか。

 校内で目立つタイプではなく、生徒間では「陰キャラ」と呼ばれていたという3人。リーダー格とされるAは被害生徒と同じクラスで、部活は水泳部。ガッシリした体格で、身長は170センチ以上ある。事件後、県外に転校したが、当時は母がPTA会長を務めていた。

 閑静な住宅街にあるAの自宅を訪ねると、母親がこう応対した。

「今の段階で、私たちは何も話せないので、申し訳ないですが、お引き取りください」

 被害生徒が自殺した直後は「うちの子こそ被害者だ」と声を荒らげていたとの情報もあったが、とても丁寧な口調だ。とそのとき、その後ろから、少年の声が聞こえてきた。

「エエよ、もう何も話さんでエエから」

 玄関口に出てきて強い口調でそう訴えたのはA本人だった。Tシャツに短パン姿で、いら立った様子を隠そうとしない。Aが母の後ろに立つと、母は何も言わず、ドアを閉めた。

 被害生徒と同じクラスだったBの母親もPTAの役員だった。Bは自殺直後に転居し、学校も転校した。

 Cは被害生徒と違うクラスで、A、Bよりいじめへの関与は薄かったようで転校はしていない。

 家は、れんが造りの豪邸だった。家を見ると、開いた窓からC本人の姿が見えた。頭は丸刈り。メガネをかけ、携帯電話をいじっていた。

――C君だよね。

「はい、そうですけど」

 けだるそうな口調だ。

――話を開かせて。

「いや、いいです」

 一家と親しい人物に開くと、現状をこう代弁した。

「Cの母は『今回の件に貢任を感じる』と話していた。Cにはネットが見られないようにしているが、それでも事件について耳に入るらしく、動揺するときもあるらしい」

※週刊朝日 2012年7月27日号