1995年の地下鉄サリン事件をはじめ、数々のテロ行為で世間を震撼させたオウム真理教。そのテロ行為は海外にも影響を与えているという。

 2001年の同時多発テロ直後から、致死性の高い炭疽菌(たんそきん)入りの封筒が米主要メディアやワシントンの米議会へ送りつけられ、5人が肺炭疽を発症して死亡、17人に感染症状が出た。史上最悪の生物テロは、世界を揺るがした。08年8月、米司法省は、自殺した米研究者の単独犯と断定したが、アルカイダが関与していたとする見方も根強い。

 オウムはなんと米国事件の8年も前に散布している。

 92年夏ごろ、麻原彰晃こと本名・松本智津夫死刑囚が遠藤誠一死刑囚に炭疽菌の入手を指示。遠藤はある在家信者から炭疽菌のワクチン株を入手した。麻原は93年春、東京・亀戸の新東京総本部での炭疽菌培養を遠藤に命じた。遠藤は従った。

 そして6月から7月にかけて2度、無差別大量殺人のため、教団が開発した噴霧装置で付近へ噴射。だが装置の圧力が強すぎて失敗、周囲に悪臭を撒き散らしただけだった。その1カ月後にも麻原は遠藤らとともに、トラック数台に積載した装置を使って東京都内に炭疽菌を撒き散らそうとしたが、装置の不良などで失敗に終わった。

 地下鉄サリン事件以降、オウムは米国の注目を受けてきた。オウムの卑劣な行動が、後のテロリストたちに影響を与えたと受け止める専門家は多い。

※週刊朝日 2012年6月29日号