気の遠くなるほど長い戦いは、静かにチェックメイトを迎えた。オウム真理教事件の「最後の逃亡者」だった高橋克也容疑者(54)が6月15日、ついに逮捕されたのだ。

「いま思えば、櫻井さん(高橋容疑者の偽名)はよくブツブツ独り言を言っていた。まるで誰かに話すようで、トランス状態みたいな感じ。まだオウムが抜けていなかったのかなあ」

 こう話すのは、高橋容疑者が勤めていた川崎市内の建設会社の元同僚の男性だ。初めて会ったのは1年ほど前、一時期職場を離れていた高橋容疑者が復帰したときだったという。

「櫻井だから、麻雀で有名な桜井章一とひっかけて、『もしかしてジャンキー(雀鬼)?』って冗談を言ったら、『そうです、ジャンキーです』と笑いながら答えた。辞めている間のことを聞くと、『精神的にまいって、うつ状態になって1年間こもってました』と説明していた。酒を飲んでるのは見たこともなかったから、飲めないと思っていた。今回の報道で行きつけの店があると開いて驚いたよ」

 遅刻もなく、几帳面で服装も清潔。 女性の話はしない。真面目すぎるほど真面目だったという。
 
 高橋容疑者の日当は1万6千円。社内では「中の上」の待遇 で、月40万円以上稼いでいたとみられる。有料・無料と2種類ある社員寮も、築年数が浅く快適な有料を選んだという。

 ただ、同僚からは高待遇への嫉妬も あったようだ。

「同年代に嫌われていて、『あいつは仕事できねえ。口ばっかりだ』とか『肌が合わない』と言う人が多かった。ベテラン職人なら10縲鰀20分で終わる溶接作業に1日かかったらしい。シビアな業界だから『あいつはダメだ』と。でも、本人も仲間になろうという意識が薄くて、会話にも入ってこない。どうでもいいという感じだった」(前出の元同僚男性)

※週刊朝日 2012年6月29日号