不透明で高額な葬儀の値段の仕組みがいま変わろうとしているようだ。ライターの朝山実氏は、実父の葬儀で喪主を務めてから、お坊さんたちへの取材を開始した。以下、朝山氏のレポートを送る。

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 高野山真言宗の僧侶となった山本栄光さんは、大阪府内で師僧とともに修行寺を建設中だ。山本さんたちは昨年、知り合いの葬儀会社にこんな案内を出した。

「枕経、通夜式、葬儀告別式、火葬場、還骨法要、初七日、四字戒名を含めてお布施を18万円で勤めさせて頂きます」

 何事も「お気持ちで」といわれるお坊さん業界では、異例の明朗会計である。戒名(院号は別)も含め初七日までの法要を「18万円で承ります」とオープンにするものだ。

 東京にも、明朗会計にしている寺院があった。こちらも真言宗で、都内近郊の住宅地の戸建ての自宅に「寺院」の表札を掲げるのは、住職の水谷永久さん(仮名)だ。

お金がかかるからと最近は、お坊さんも呼ばないで荼毘にふす直葬が増えてきている」

 水谷さんのところでは、初七日までの読経と戒名を含め15万円で引き受けている。檀家は20軒ほどと少ないが、地域に溶け込んでいる。逆に葬儀社を紹介することもある。「うちに頼まれるぶんにはキックバックも発生しませんから」

 水谷さんのお寺は、お布施の目安は20万円から30万円。戒名も信士で20万円から30万円だ。院号となると金額が跳ね上がるとはいえ、真言宗の平均的なものだ。

 格安で引き受ける理由を問うと「布教です」ときっぱり。だから終わったあとには必ず法話をするという。

「そういうときにはみなさん、仏教はありがたいものだなと思ってもらえます」

※週刊朝日 2012年4月13日号