鳩山由紀夫政権が2009年12月に株式売却を凍結した日本郵政グループ。郵政民営化も止まった。それ以来、郵政グループは2年以上も中ぶらりんのままになっている。そこに登場したのが、公明党がまとめた郵政民営化の改正案だ。しかし、この法案をめぐって、民間企業からも批判が相次ぐ。

 この法案の大きな特徴は、1.グループの持ち株会社・日本郵政の株式売却は〈できる限り早期に〉、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険については〈早期に〉として、年限を明示しない、2.日本郵政がゆうちょ、かんぽの株を2分の1以上処分後、新規事業への進出は認可制から届け出制に――という2点だ。

 2の新規事業については、ゆうちょ、かんぽと競合する金融業界の不満が根強い。国の信用を色濃く残す有利な立場で同じ土俵に出られるからだ。具体的には、個人向け住宅ローン、中小企業向け融資、がん保険などが挙げられている。

「官業と民間の『いいとこ取り』です。官業なら規模を縮小して民間の補完に徹するべきだし、民間なら競争条件を対等にしなければなりません」(金融関係者)

 ある銀行関係者は、こんな事態を想定する。ゆうちょ銀行が融資を始めたものの、審査などのノウハウが乏しいので、他社との差別化を図ろうと金利を大幅に引き下げる......。

「地域金融機関の経営を直撃するでしょう。これこそが『壮大なる民業圧迫』ですよ」(この関係者)

※週刊朝日 2012年3月16日号