頭の良さはどれほど遺伝するのか。別の言い方をすれば、どれほど努力は報われるのか。脳研究者の池谷裕二氏がIQ(知能指数)について語る。

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 IQは長年安定であることが知られています。11歳で測ったIQは79歳で再測定したIQと驚くほど一致します。相関率は60%を超えますから、若いころに行ったたった1回の、それも、わずか45分間のテストとはいえ、案外と馬鹿にできないことがわかります。

 こんな話をすると「IQにどれほどの意味が? 人生の指標の一つに過ぎないさ」という声もありそうです。

 エディンバラ大学のディアリ博士らによれば、IQはその後の学業成績とよく一致すると言います。たとえば小学生のIQ値は、高校生になってから行う全国統一テストの成績と80%以上一致します。いや、将来の職業的な成功とも比較的よく相関するのです。

 これで驚いてはいけません。IQから健康状態でさえ予測できるというのです。実際、IQが高かった子どもは、青年期の死亡率が低く、中高年以降も健康な傾向があります。100万人の男性について検査した大規模なデータが手元にあります。20歳でIQを検査して以降、長期にわたって追跡調査した結果です。20年後の死亡率は、IQ値が15上がるごとに32%ずつ低下するようです。

※週刊朝日 2012年1月27日号