韓国人の妻・趙永珠さん(当時41)の遺体をバラバラにして川などに捨てたとして、昨年7月に死体遺棄の疑いで逮捕された神奈川県警元警部補で夫の山口英男被告(50)。その後、殺人容疑で再逮捕されたものの、横浜地検が殺人罪の適用を見送ったため、「傷害致死罪」での追起訴にとどまっている。
その裁判がまもなく始まる見込みだ。初公判を前に、韓国に住む永珠さんの姉が、本誌に胸中を明かした。
「妹と山口が結婚した当時、私は日本で、二人と3カ月間、一緒に暮らしたことがあります。その時の山口は優しかったのに、あの時の優しさはどこへ行ったんでしょうか」
亡くなった永珠さんは3人きょうだいの次女で、下に弟がいる。
「父は80歳。認知症で妹のことをほとんどわかっていませんが、妹がいなくなった一昨年9月、母は何も教えてなかったのに、3日間ずっと妹の夢を見たと話していました」
永珠さんとは頻繁に国際電話で話をしていたという。
「妹は親よりも私を頼ってくれました。親に言えないことも、私には全部打ち明けてくれたし、私が住む韓国にプレゼントを送ってくれたり、私が日本へ送ったり......かけがえのない、たった一人の妹でした」
永珠さんは約20年前に来日し、韓国クラブで働いた。店の常連客だった山口被告と交際したが、査証切れで不法滞在の身に。その事実を知りつつ結婚に踏み切った山口被告は入管難民法違反で書類送検され、04年末に県警を退職した。
起訴状によれば、10年9月1日、横浜市内の自宅で永珠さんに何らかの暴行を加え、死亡させたとある。
「山口は『自分が押したら永珠が倒れて死んだ』と説明したそうです。殺意はなかった、と。それならどうして、すぐに救急車を呼ばなかったんでしょうか? バラバラにして捨てるというのはおかしいですよ!」
横浜地検は「殺人罪として起訴するに足る証拠が得られなかったために、傷害致死罪で起訴した」としているが--。
「日本の検察を信用してません。なぜ殺人罪に問えないのでしょうか。妹は生きて帰って来られないんだから、この後、自分は悔いがないように闘いたいと思います。私は、最後の最後まで殺人を主張していきます。妹を亡くした悔しさは言葉では表せません」
姉は初公判に合わせて来日する予定だ。 (本誌・上田耕司)
