超「円高」から資産を守れ! 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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超「円高」から資産を守れ!

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 実は、今回の円高を確実に止める手だてはありません。だけど、「ない」と言ったら、その瞬間から5円、10円と円高が進んでしまうでしょう。それに連れて日経平均株価も7千円になるかもしれません。

 だから、野田佳彦財務相が「極めて注意深く見守ってまいりたい」(8月12日)と発言したように、ごまかすしかないわけです。

 〈円は21世紀に入って、もっとも高い水準にある。しかし、財務相だけではなく「通貨の番人」である日本銀行の白川方明総裁も「国内経済に与える影響について、注意深くみていく」と歯切れが悪い。やはり手はないのか。〉
 
 一般に、円を安くするのには二つの方法があります。

 ひとつは、政府が為替市場で円を売って外貨を買う市場介入です。しかし、米国も欧州も景気が悪いので、協調してくれそうにありません。景気をよくするのに、自国通貨を安くして輸出を後押しする政策をとっているからです。為替市場は巨大なので、日本だけで市場介入をしても円高の基調を変えるには至りません。

 もうひとつは金利を下げることです。いま論じられているのは、世の中に出回るお金の量を増やそうという案ですが、これを過去やってみた中央銀行はありません。実効性が極めて疑問だからです。
 この二つを組み合わせるのが最高の政策になりますが、今回はどちらも難しい。

 その意味で、今回に限っては、政府と日銀の無策は仕方ありません。日銀に「何とかしろ」と非難が集まっていますが、日銀は「魔女狩り」の犠牲者にすぎない。本当に悪いのは過去に「罪」を犯し続けてきた日本政府です。この「負の遺産」が、いま円高として表面化しているのです。

●「社会主義」向く政府が問題の根

 政府の「罪」とは、「小さい政府」をめざして規制緩和などを進めた小泉改革が挫折したあと、それとは正反対の「社会主義」に向かっていることです。

 資本主義が正しく機能していれば、お金は、いちばんもうかるところに流れていくはずです。GDP(国内総生産)が20年間ほとんど伸びなかった日本ではなく、成長してきた海外でしょう。実際、海外のほうがよほど金利が高く、株価も上昇しました。

 ところが「社会主義」志向の政府は市場原理を働かそうとしない。ゆうちょ銀行が大量のお金を集めて、それで国債を買う。こんな形で日本国内にお金をとどめたのです。海外にお金を向かわせない仕組みです。これは、借金を元手に「バラマキ」を続けるうえでも不可欠でした。

 海外にお金が流れないから「円売り・外貨買い」が起こらず、円高となる。輸出がふるわなくなり、景気も低迷する。円高のせいで工場も海外に出ていってしまうから、地方経済も疲弊する。それに対処しようと財政出動するから国の借金が積み上がっていく--。日本経済を悩ます「円高」「景気低迷」「財政赤字」という三つの問題の根はひとつで、すべて「社会主義」を志向する政府にあると言ってもいいでしょう。社会主義がうまくいかないことは歴史が証明しているのに。

 通貨は基本的に国力の通信簿ですから、国力5のときに通信簿も5なら問題ありませんが、現状は、経済が低迷して国力1なのに通信簿が5だから最悪なのです。日本人に多い「円高がいい」との誤解は通信簿5がうれしいからでしょう。しかし喜ぶべきは、通信簿がいい、つまり通貨が強いことではなく、国力が強いことです。

 ともあれ、このまま円高が続けば、遅かれ早かれ財政は「破綻」しますよ。政府に抑えつけられている金融市場が反乱を起こすのです。「破綻」した国の通貨はだれも買いたくないでしょうから、一時的に1ドル=500円なり1千円なりの円安まですっ飛んでもおかしくない。

 〈「破綻」の前に円安にするにはどうすればいいか。〉
 
 わたしの案を紹介しましょう。1452兆円(3月末)もある個人金融資産を動かすのです。国内経済がこれだけ悪いのだから、海外投資に向かうようにする。対外証券投資は9兆円(3月末)しかありませんが、個人のお金の1割なら145兆円、2割なら290兆円が動くわけです。政府が03年度に市場介入したのが約33兆円ですから、文字どおりケタ違いの金額ですよ。

 政府がやるべきは、このきっかけづくりです。いちばん効果的なのは税制を変えることでしょう。海外投資、たとえば米国の株や債券を売買・保有した場合には、売却益や配当にかかる日本の税金をゼロにする。それだけで、米国の株や債券を買い始めるでしょうね。一度円安になれば、さらに海外投資に拍車がかかり、さらに円安になりますよ。米国株は日本の証券会社でも買えるという情報を広めるのも大切になります。

 為替は経済にとって、ものすごく重要です。それなのに、日本では為替政策があると思われていないのが問題です。政府や日銀が為替を動かそうとすると、「海外に輸出して稼ぐ近隣窮乏化政策だ」「米国が文句を言う」と非難されるわけです。

 〈政府・与党では、かつてこんな発言があった。大蔵省出身の藤井裕久衆院議員は財務相就任の直前、「日本は基本的には円高がいい」と言ったのだ。財務相になってからも、「円安がダメだとか円高がいいという話はしていない」と話すなど、為替誘導には否定的だった。〉
 
 わたしは「大きな政府」には大反対ですが、それでも、たとえば「為替局」のような専門部署を政府につくって、為替政策を研究すればいいと思います。

 もっとも、今回は、政府や日銀が何もしなくても、いずれ反転する可能性がかなり高い。こんなに弱い国の通貨が世界一強くなるのはあり得ないからです。

 しかし、円高の圧力が完全に解消されるわけではありません。政府の「社会主義」志向という大きな構造問題を放置している限り、政府の財政政策でも日銀の金融政策でも日本経済が抜本的によくなることはない。

 この状況で、どうすれば自分の資産を守れるのか。

 いまは海外投資という「保険」をかける時期です。日本が「破綻」すれば円は大暴落する危険が高いので、外貨建ての資産を持てばダメージを減らせます。逆に「破綻」しなくても喜ばなくてはいけません。火災保険がムダになったと怒る人はいないでしょう。それと同じです。 (構成 本誌・江畠俊彦)

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 ふじまき・たけし 1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを経て、現在は投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表を務める。新著『日本破綻 「その日」に備える資産防衛術』(朝日新聞出版)では「破綻」に備えた具体的な「保険」のかけ方を紹介している


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