雨や曇りの日が続くと、いつもより夜空を眺める機会も減ってしまいますね。星空観測が難しい梅雨時ですが、雲のうえでは一期一会の天体現象が展開されています。

今回は、古代の天文学者たちを惑わせ、占星術の世界でも大きな意味をもつ、「惑星の逆行運動」について考えてみましょう。

惑星という名称に由来する、「逆行」とはどんな現象?

太陽系には、太陽に近い順に水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8つの惑星があり、それぞれが一定の周期で公転しています。公転周期は太陽に近いほど短く、地球が約365日なのに対して、水星は約88日、いちばん外側をまわる海王星は約165年かけて一周します。地球をはじめ、すべての惑星は、太陽のまわりを西から東へ公転しています。そのため、地球から見る惑星も、夜空を西から東へ移動しているように見えます。これを、惑星の「順行」といいます。

ところが、惑星が東から西へ動き、まるで来た道を戻るかのような「逆行」という現象が周期的に起こります。この不穏な動きは、天動説を唱える古代の天文学者たちを悩ませ、占星術にも影響を与えました。この現象は「惑星(planet)」の名前の由来になったといわれ、英語のplanet(プラネット)の語源はギリシア語の「プラネテス」で、「さまよう者、放浪者」を意味します。

実際には惑星が逆方向に動くことはなく、「逆行」はあくまで見かけ上の動き。地球の外側をまわる外惑星(火星・木星・土星・天王星・海王星)の場合は、外惑星よりも地球の方が公転周期が短いことが要因となります。逆行が起こるのは、地球が外惑星を追い越そうとするときなのです。逆に、内惑星(水星・金星)の場合は、地球よりも内惑星の方が公転周期が短いために逆行が起こります。

4つの天体が逆行中。8月には5天体に増加!

2021年は、6月21日の夏至の日に木星が逆行を開始。26日には海王星も加わり、すでに逆行していた土星と冥王星(準惑星)を合わせて、現在4つの惑星、準惑星が逆行中となっています。

天体によって頻度と期間には規則性があり、水星は1年に3回程、約3週間続きます。金星は1年半に一度が約1か月間、火星は約2年に一度が60日程、木星・土星・天王星・海王星・冥王星は、それぞれ約1年に一度、5か月前後続きます。

現在逆行中の木星と土星は、肉眼で観察可能。木星はみずがめ座を西に移動しています。真夜中の南東の空に見え、マイナス2.6等からマイナス2.8等で明るく輝いています。土星はやぎ座を西に移動中。真夜中の南東から南の空に見え、明るさは0.4等から0.2等です。梅雨の晴れ間のひと時、夜空を見上げてみませんか。

「水星の逆行」が、占星術で注目される理由とは?

占星術の世界では、古より天体の逆行は重視されてきました。逆行が意味するのは、未来よりも過去への意識。停滞やトラブルが暗示されることもありますが、振り返り、やり直し、再挑戦といったポジティブな意味合いも。また、水星、金星、火星は個人的な影響、木星より遠い天体は社会全体や集団意識に作用する要素が強くなるとされています。準惑星となった冥王星も、占星術では変わらず重要な星としてメッセージを発しています。

【2021年逆行スケジュールとメッセージ】

★水星

1回目:1月31日〜2月21日

2回目:5月30日〜6月23日

3回目:9月27日〜10月19日

コミュニケーションや情報伝達、通信、移動、交通などでのトラブル。内面を整え、自分らしい思考を練る好機。

★金星

12月19日〜2022年1月19日

恋愛や金銭に関することは慎重に。高額な買い物や借金などにも注意。美しいものに触れて感性を磨く時期に。

★火星

逆行なし

次回は、2022年10月30日〜2023年1月13日

衝動的な行動を避ける。停滞感や無力感に捉われやすい。過去の行動を見直し、自分らしいやり方を模索する時間を持って。

★木星

6月21日〜10月18日

拡大や発展のスピードが落ちる暗示。社会全体への影響も。現状維持をキープするなど、じっくり物事に向き合う時期。

★土星

5月23日〜10月11日

課題や責任、苦手なことにも向き合う期間。過去の経験から得るものを大切にしながら、新たな一歩を踏み出す準備を。

★天王星

(2020年8月15日)〜2021年1月14日

2021年8月20日〜2022年1月19日

社会全体と自分の間にある壁を取り払いたい時期。世の中に目を向けて、視野を広げることを大切に。

★海王星

6月26日〜12月1日

夢や理想を追い求める傾向に。現実を見て、自分と社会に向き合うことを心がけて。

★冥王星

4月28日〜10月7日

無力感に襲われても、生まれ変わるような気持ちを大切にしたい時期。

天体の逆行のなかでも、特に「水星逆行」が注目されるのは、より身近な内容で個人的な影響を受けやすいことにあるようです。水星の公転周期が短く、頻繁に逆行が起こることも一因といえます。水星が司る「情報、コミュニケーション」の分野が、人間関係や仕事といった私たちの日常に、いかに直結するテーマであるかを物語っていますね。逆行が重なる時期を迎えている今、振り返り、やり直し、再挑戦のチャンスと捉え、自分との対話を楽しんでみてはいかがでしょうか。

参考文献

『アストロガイド 星空年鑑 2021』 アストロアーツ

石井ゆかり『星読み+』幻冬舎

参考サイト

アストロアーツ