続々到来する冬の使者、カモたちで水辺は大賑わい!カモウォッチング《後編》 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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続々到来する冬の使者、カモたちで水辺は大賑わい!カモウォッチング《後編》

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冬の日本列島はオシドリのメッカ。なぜこれほど美しく進化したのでしょうか

冬の日本列島はオシドリのメッカ。なぜこれほど美しく進化したのでしょうか

ほとんどピックアップされませんが、オシドリのメスもなかなかかわいい衣装なのです

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ハシビロガモたちのフォークダンス。水面のプランクトンを漉し取っています

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海岸で一休みするスズガモたち。東京湾など内湾では、スズガモたちの大集団が見られます

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ミコアイサ雄。くちばしには、魚を捕らえて離さないぎざぎざの鋸歯が

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一見寂しげな冬枯れの季節の水辺は、冬の渡り鳥・ガンカモ類が全国に約200万羽も到来してにぎわっています。前編ではスタンダードなマガモをはじめとした代表的な淡水ガモを取り上げました。後編では、日本が誇る世界一美しいカモ、そして個性的な海ガモを取り上げたいと思います。

☆あわせて読みたい!

続々到来する冬の使者、カモウォッチングを楽しもう《前編》


世界一美しいカモは日本にあり!「オシドリ」

オスのカラフルな婚姻色から、「世界一美しいカモ」ともたたえられるオシドリ(鴛鴦 Aix galericulata)は、カモ科オシドリ属で、シベリア、中国、朝鮮半島、日本に分布します。

日本国内では漂鳥もしくは留鳥で、秋から春にかけては暖地や平地で、夏の繁殖期には寒冷地や高原に移動する傾向があります。それに加え、東アジアではもっとも温暖な日本には、大陸のオシドリたちが日本に渡ってくるため、オシドリの生息数がもっとも多くなります。日本はオシドリのメッカと言ってもいいでしょう。ヨーロッパではこの美しいカモを移入し野生化していますし、数年前にアメリカのニューヨークの公園の池にオシドリが迷い込むと、地元の人々やメディアが熱狂して追い回したというニュースもありました。

全長はオスが50cmほど、メスが40cmほどと中小型のカモ。多種同士が集まって大集団になることの多いカモ類ですが、オシドリは多種と混じることなく、同種のみで小規模な群れを作る独自路線タイプです。

オスの羽色は、なぜこれほどに色鮮やかにする必要があったのだろう、といぶかるほどの着飾りようです。くちばしは赤く、目の付近から頭頂部全体を覆う豊かな冠羽は日本髪のようにふくらみを持って後頭部に流れます。冠羽は眉間から頭頂部にかけては緑色、後頭部にかけては臙脂(えんじ)色、さらにその先端の毛束は青緑と変化し、側面は純白で、目の下付近から頬羽は赤褐色で、ひげのようにふくらみながら頚部にひろがります。胸の上部は紫色で、その下には黒と白の縞模様が入ります。腹部は純白で、第1三列風切羽は特徴的なオレンジ色のイチョウの葉型になり、ピンと上部に大きくはねあがってよく目立ちます。後背部も深緑、鮮やかなブルーに色分けされます。

そんなど派手なオスに寄り添うメスは、何かと地味だ地味だといわれますが、客観的には決してそんなことはありません。全体はスモークがかった葡萄色、目の周りは真っ白に縁取りがはいって、ぱっちりしたかわいらしい顔立ちをひきたてます。おなかにかけては広く白い斑紋がはいって、なかなかしゃれたデザインで、「あの派手なオシドリのメス」というバイアスで見なければ、充分きれいな色模様の野鳥です。

子育てのための巣は木の高い場所の洞に設けられ、雛たちは巣立ちとなると、自ら地上に飛び降りて、母ガモについて水上生活をするようになります。

オシドリといえば「おしどり夫婦」ということわざ、「鴛鴦之契(えんおうのちぎり)」という成語が結婚披露宴のスピーチでも頻出するとおり、夫婦愛和のシンボルとして扱われてきた歴史があります。東晋の怪異譚集『捜神記』(そうじんき 4世紀ごろ 干宝)で、宋代の康王の臣下韓憑は、王に妻を奪われます。すると韓憑は悲嘆のあまり自害し、妻もまた後を追いました。この後、二人の墓から梓の木が生えて互いに引き合うように結びつき、そこにオシドリのつがいが棲んで悲しげに鳴いた、という逸話があります。

こうしてオシドリは生涯、慕いあう夫婦の象徴となったのです。日本各地にオシドリのつがいの片方が撃たれ、ほどなく残ったつがいが寄り添うように死んでいた、という悲しい民話が伝わっていますし、筆者の地元には「鴛鴦(おしどり)寺」という異称をもつ古刹があり、境内にはオシドリを祀る「鴛鴦塚」が据えられていたりします。

もちろんこれは人間の勝手なイメージ仮託で、多くのカモ類と同じように、オシドリも基本的には毎年新しいペアを組み、繁殖が終わると解消するという習性があります。


ぐるぐるダンスを見せるカモ界のファニーフェイス「ハシビロガモ」

ハシビロガモ(嘴広鴨 Anas clypeata)は、マガモ属の中型のカモで、北アメリカ大陸、ユーラシア大陸から日本にかけて広く分布します。日本には冬鳥として比較的多く渡来し、各地で見られるカモの一種ですが、そのわりに一般的認知度が低いのは、オスの婚姻色の羽色が、頭部のメタリックグリーンや胴体の白と茶系でマガモに一見似ているために、遠目では見落とされがちだからかもしれません。

しかし、ハシビロガモの他種にないユニークな特徴は、くちばしです。付け根よりも先端部のほうが広くなっていて、まるでスコップのような形のため、英語圏ではshoveler(シャベル使い)と呼ばれています。付け根付近のくちばしの上下の合わせ目はわずかに開いていて、細かな櫛のような歯が生えており、広い先端部を水につけて、しゃくるように水を吸い込み、付け根の櫛の部分から水だけを排出して、水の中の小さなプランクトンや虫の幼虫などを摂取します。その際、プランクトンを効率的に摂取するために水面をぐるぐると回って水の渦を作ります。面を泳ぐ脚の動きで水を撹拌するため、植物プランクトンが水面近くへ動き、それを狙った次の個体が後方へ並びます。そのため何十羽も集まると、大きな渦になっているのがわかります。ハシビロガモの群れが渦を作るさまは、キャンプファイヤーのフォークダンスさながらで、見ていてあきません。


はばたきは涼やかな鈴の音、羽色はカラスの濡れ羽色「スズガモ」

スズガモ(鈴鴨 Aythya marila L.)は、カモ科ハジロ属に属する全長50cmほどの中小型の海ガモです。海ガモとは、分類学上の区分があるものではありませんが、淡水よりも海を好み、潜水が得意な反面、飛び立つときには水面を助走しないと飛び立てない(対して淡水ガモといわれるカモは、助走なしにその場から飛び立つことができますが、潜水はあまり得意ではありません)傾向があるカモのことです。

日本に渡ってくる越冬カモ類の中でも、ハジロ類の3種、スズガモとホシハジロが約15万羽以上、キンクロハジロが8万羽と、安定して数が多く、飛来するカモ類のうちの20%程度を占める大グループです。海生動物、特に貝類を好み、巧みに潜水して海底の貝を採って食べます。主に波の静かな内湾、海岸沿いの汽水域などで大群を作り、特に東京湾の行徳浜付近の大群は圧巻です。

メスの羽毛は、他種のメスと比べて目立って黒っぽく、全体に黒に近いダークブラウンで、くちばしの付け根付近に白いポイントが入ります。

オスは頭部全体と胸元にかけてと尾羽根は漆黒で、頭部には緑色の構造色の光沢が差して、カラスの羽色にも似ます。翼の付け根から中間部は白く、後背部は白に黒い細かい波模様が入ります。

皆さんも、ハトがはばたくときの独特の音はご存知と思いますが、鳥の羽音には種によってさまざまな特徴があり、「スズガモ」の名の由来はその羽音が鈴が鳴るような独特の高い音色から来ています。

近縁種でスズガモと並んで多く飛来するキンクロハジロは、やはり頭部は緑の金属光沢が入る漆黒で、腹部以外も黒く、スズガモにはないちょんまげのようなかわいい冠毛が後頭部に伸びています。


カモ界きってのビジュアル系?「ミコアイサ」

ミコアイサ(巫女秋沙 神子秋沙 Mergus albellus)はカモ科アイサ属に属し、日本にはウミアイサ、カワアイサ、そして本種が冬鳥として渡来します。

アイサ属は海ガモ(ハジロ属など)に習性が近く、潜水して海生生物を食べます。魚を飲み込みやすいよう、くちばしの縁には内向きのぎざぎざの歯があり、また、カイツブリやウのように、くちばしの先端が下向きにやや曲がって鉤のようになり、魚食に適した形態になっています。

ミコアイサは海にもいますが、どちらかというと淡水域の広い湖沼を好みます。またオスの羽色が目立つためか、人への警戒心は強く、岸辺近くにはあまり寄り付かず、沖遠くに浮かんでいることが多く、人に気づかれにくいようです。

ミコアイサは、アイサ属の中でもっとも小型ですが、オスの婚姻色は輝くような純白に、漆黒のポイントやラインが入るきわめて目を引くもの。オシドリがサンバカーニバルのダンサーのような賑やかなカラフルさだとしたら、こちらはモノトーンでまとめたアーバンなビジュアル系ロックスター、とでもいったところで、カモ類の中でも特徴的な羽色で屈指の人気です。ふさふさと伸びた冠羽をふくめて全身は白く、後背部と目の周りが漆黒、さらに胴部の側面に一本、両肩に二本のシャープな黒いラインが入ります。白を基調に、目の周りが黒いことから、「パンダガモ」という俗称もあります。

ところで「あいさ」という不思議な和名は、古くは「あきさ」と呼ばれていたものが子音が脱落して「あいさ」となった、といわれています。漢字で「秋沙」「秋早」「秋去」と充てられるため、その意味を「秋が去る頃(晩秋)にやって来るから」「秋、早くにやって来るから」という説明がなされますが、これは眉唾ものの俗説。冬鳥のカモ類は概ね晩秋に飛来するので、なぜアイサ類に限ってそう名づけられたのかがわかりません。また、アイサ類が他のカモに先駆けていち早く飛来するという習性はなく、むしろコガモやマガモのほうが、早くから到来する=秋早の傾向があるのです。

「あいさ(あきさ)」とは、「あ」はあぎ、つまり顎(くちばし)で、「きさ」はぎざぎざのものや細かくとがったもの、草木の芽の意味で、アイサ類のくちばしにずらりとならんだ内向きののこぎりのような歯から「あぎきさ」と呼ばれていたものが「あきさ」→「あいさ」と変化したものと考えるべきでしょう。

水鳥であるカモたちにとって、水量、水辺環境が豊富な日本列島はまさに楽園でありオアシスです。彼らがこれからも好んで渡ってくる環境を維持したいものです。


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