「東京2020」まで1年を切りましたが、その5年後を指す「2025年問題」という言葉をご存じでしょうか。2025年は東京オリンピック・パラリンピックが終わった5年後ですが、日本は世界に類を見ないスピードで超高齢社会へ突入しています。その社会的変化の分岐点となるのが2025年といわれていますが、そう遠くない未来において医療、社会保障、介護などの分野で、6年後にどんな問題が起こりうるのでしょうか。
── 盛夏のひととき、日本を取り巻く社会問題について考えてみませんか。

来るべき2025年に向けて何ができるか
来るべき2025年に向けて何ができるか

2025年には団塊世代が後期高齢者に。少子化が進む日本は超高齢社会に突入

日本の総人口は、現在約1億2600万人。
2008年をピークに減少に入りましたが、65歳以上の高齢者数は増え続け、2025年には3657万人、2042年には3878万人になると予測されています。
さらに2025年は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる年で、これにより後期高齢者の数は、全人口の約18%にあたる2179万人になります。つまり日本は、急速に超高齢社会に突入するわけです。
65歳を過ぎると年金受給が始まり、75歳を過ぎると介護サービスなどの需要も増えていきます。年金や医療、介護、福祉といった社会保障は、高齢者が増えるほど増加していくものであり、社会保障給付費の総額はこの20年で2倍以上になりました。この先さらに増加していくことは間違いありません。

どうなる?社会保障
どうなる?社会保障

増え続ける社会保障給付費。将来世代への負担も増え続ける

高齢者を支える現役世代の人口が減少している日本……。
■1965年ごろ ➡ 65歳以上1人に対して20~64歳は9.1人
■2012年ごろ ➡ 65歳以上1人に対して20~64歳は2.4人。
■2050年 ➡ 65歳以上1人に対して20~64歳は1.2人という状態に。
1960年代は、現役世代が高齢者を支える理想形が実現していましたが、数字の推移からもわかる通り、2025年には「1人の現役世代が、1人の高齢者を支える」という厳しい現実が待っているのです。
社会保障給付費は、現役世代が収める社会保険料と国や地方の負担から成り立っています。これまで社会保障制度を支えてきた団塊世代が受け取る側になり、さらに少子化などもあり、収められる社会保険料は横ばいのまま。増大する社会保障給付費を補填する国や地方の負担は増大しています。この負担の約半分は国債です。
将来世代への借金が増え続け、国民が支えきれなくなるのではないか──。これが2025年問題が指し示す大きな課題とされているのです。

高齢者1人を支える現役世代の数は、2025年に1.2人に……
高齢者1人を支える現役世代の数は、2025年に1.2人に……

支え合う世の中への期待と同時に、人生100年時代を自ら設計する力を

社会保障給付費の問題だけでなく、医療の現場や介護の現場での人手不足も指摘されています。前述したように、高齢者1人に対して、それを支える人数が少なければ、さまざまな場面で問題も増えていくでしょう。
2017年8月からは70歳以上の高額医療費の自己負担が、段階的に(所得によって変わりますが)引き上がってもいます。
政府も医療・介護に対して、病院完結型から地域全体で治し、支え合える地域簡潔型への推進や、受け皿となる地域の病床や在宅医療・介護の充実などを提案しています。
また、国民の健康増進、疾病の予防や早期発見などを、積極的に促進する必要などの方向性も示しています。

安心できる老後に期待したいですね
安心できる老後に期待したいですね

タンス預金から投資へ……

金融庁が「老後資金に2000万円必要」との報告書を発表し、物議をかもしたことも記憶に新しいですね。この問題に端を発し、手元の資産を投資にまわしたいと考え始めた人が増え、実際に金融機関を訪れる人が急増しているとも報道されています。日本ではいま「タンス預金から投資へ……」という動きが加速しているようです。
若い世代も中堅も、老後の資金づくり、健康づくりについて現役世代のうちから自ら設計していく考えを持つことが、人生100年時代といわれる今日の最重要課題の一つといえそうです。