最近はスーパーやコンビニで多種多様の飲料水がペットボトルで販売されています。特に夏場は「熱中症対策 = こまめな水分補給」が推奨され、各社メーカーが競い合うように銘柄の違う「水」を販売しています。みなさんご存じの通り、美容・健康のために「水分補給」は大事なポイントですね。
さらに、浄水器やウォーターサーバーが一般家庭にも広がり、水へのこだわりは高まる一方。空前の水ブームともいえる昨今ですが「ただなんとなく」「体によさそうだから」……という思いで水を飲んでいる人も多いのではないでしょうか。
いよいよ8月! 元気に夏を乗りきるために「水」について簡単に学んでいきましょう。

空前の水ブーム
空前の水ブーム

体内での水の役割

ではまず、水が私たちの体内でどのような働きをするのか、おさらいしましょう。
【体内での水の働き】
・栄養やホルモンを運ぶ
血液は酸素や栄養、ホルモンなどを体の隅々にまで運ぶ役割を担っています。そして、血液の約83%は水だといわれています。
・老廃物などを体外に排出する
血液は老廃物や過剰な物質を運び出し、 体外に排除しています。
・体温を調節する
例えば、気温の上昇や運動などで体温が上がったとき、体内の水が皮膚の表面に汗となって排出され、蒸発するときに皮膚表面の温度を下げる働きをします。
・血液濃度の調整
血液中の水分を増減させることで血液量を一定に保つとともに、濃度を適正なバランスに調節しています。この働きにより、血圧を正常な値に保つことができています。
どれひとつとっても、私たちの生命維持に重要な働きをしています。例えば、私たちの体温は36~37℃くらいに保たれていますが、これが1〜2℃違っただけで大変なことになりますね。
また、体内の水が十分保たれていれば、血液がサラサラになり、体の隅々にまで循環し、全身の細胞に酸素が補給され、健康に保たれます。逆に血液が水分を失ってドロドロになると、脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなります。

寝る前と起き抜けにコップ一杯の水を……
寝る前と起き抜けにコップ一杯の水を……

天然水とミネラルウォーターの違いは?

しかし、この大切な水も加齢とともに減少します。
体内に含まれる水分量のおおよそを挙げると……、
新生児は約80%
幼児は約70%
成人男性は約60%
女性は約55%
60歳以上約50%……に減るといわれます。水分量も成長・加齢とともに少なくなることがわかりますね。
赤ちゃんの肌がしっとりとみずみずしく、高齢になるにつれ乾いてカサつくのは体内に含まれる水分量の差なのですね。よって、加齢とともに水分補給の必要性が高まります。
体にとって重要な水を的確に補充することは、健康な体づくりのカギ。また、私たちの体の半分以上が水でできているなら、どのような水を飲むかも大切ですね。
ペットボトルで売られる飲料水のラベルをよく見ると、「天然水」「ミネラルウォーター」「ナチュラルミネラルウォーター」などと表記されています……。
これらの違いは何なのでしょう?
【天然水】
自然の源水を採水したもので、ろ過、沈殿、加熱殺菌のみの加工を行ったもの。自然の恵みをできるだけそのままにして、自然に含まれたミネラルに関しても多くがそのままの形を残します。
【ミネラルウォーター】
天然水における、ろ過、沈殿、加熱殺菌の加工に加えて化学処理やミネラルの添加、一度ミネラル分を取り去って味の調整をしてから再添加などをしたものは、ミネラルウォーターとなります。
【ナチュラルミネラルウォーター】
ミネラルを含んだ天然水。
【ナチュラルウォーター】
ミネラルが含まれていない天然水。
ちょっと紛らわしいですが、これらの種別は水の成分によるのではなく、「天然水」の加工にひと手間加えたものが「ミネラルウォーター」と呼ばれるようです。

水道水が飲める国は、世界でわずか15国ほど!

ペットボトルの水は盛んに宣伝され、自販機にも並べられ上々の売れ行きを誇っています……。
ペットボトルの水を買うのがあたりまえになると、「天然水」や「ミネラルウォーター」はきれいな水で安全、「水道水って飲んでも大丈夫?」と思う人も少なくないようです。
実際、水道水は「塩素臭い」「カルキ臭い」「おいしくない」……という感想をよく耳にします。
今から40年くらい前、日本では「水はお金を出して買うものではない」という考え方が一般的でした。ところが1983年、ハウス食品から「六甲のおいしい水」が発売され、これが昨今の水ブームのさきがけになったといわれています。
当初は、カレーを食べるときに飲む水、という趣旨で売り出されたのですが、異例の売れ行き! 各社が争うようにペットボトルの水を発売し、現在に至ったとか。
さて、日本の水道水は、「飲んでも大丈夫」なのでしょうか?その答えは、
世界196ヵ国のうち、「水道水が飲める国」はわずか15国ほど
もちろん、その中に日本も入ります。
実は日本の水道水は、世界一とも言われるほどきれいな水。日本の水道水の水質基準は、1957年に施行された「水道法」によって定められています。ここで掲げられた目的はたったひとつ。
「水道水を生涯飲み続けても人体の健康に全く悪影響がないこと」
日本はこのたったひとつの目的のために、60年以上前から厳しい基準を整備してきています。
日本の水道水は水道法に基づく水質検査により、51項目もの水質基準項目をクリアしていなければなりません。
一方、ミネラルウォーターは、水道水とは違って食品衛生法で管理されています。使用する原水を年に一度検査するようになっていて検査項目は18種類、水道水の検査と比べると10分の1くらいとのこと。

ミネラルウォーターより、水道水の水質検査のほうが厳しい?

私たちが日々、日常的に飲む(使う)水道水と、飲む飲まないは本人の選択であるミネラルウォーター(および天然水など)……。ミネラルウォーターよりも水道水の水質検査が厳しいのは当然のことかもしれません。
水道水とミネラルウォーター、どちらが安全なのかは難しい問題ですが、
「ミネラルウォーターはおいしくて安心」「水道水はまずくて危険」
という考え方は、少し極端といえるかもしれません。
水道水は地域や住宅事情(一戸建てや集合住宅)によっても違いがあり、塩素やカルキの臭い、おいしい、まずい……も人それぞれ。ここは固定観念を抜きにして、ミネラルウォーターと水道水を飲み比べてみるのもいいかもしれません。

目にも涼やか、レモン水。ミントを添えて……
目にも涼やか、レモン水。ミントを添えて……

水道水を、よりおいしく飲む方法

では最後に、水道水をおいしく飲む方法をいくつか、ご紹介しましょう。
【水道水を、よりおいしく飲む方法】
・15~20分沸騰させる
蒸気と一緒にカルキが抜けます。
・レモン汁を入れる
コップ1杯程度の水であればレモン汁を2~3滴、量が多いときはレモンのスライスを入れます。レモン果汁に含まれるビタミンCが塩素と結合(化学反応)して、塩素が除去されます。
・緑茶に通す
茶こしにひとつまみの緑茶を入れ、水道水をゆっくり通すことで、緑茶に含まれるカテキンやビタミンCが残留塩素と反応して分解されます。
・日光に当てる
太陽に当てることで、塩素がUV分解されて抜けます。ペットボトルなどに入れ、日中屋外で6時間以上置くと効果アリ。
・冷やす
冷蔵庫に一晩入れておくと残留塩素がほとんどなくなり、まろやかになります。
── 梅雨が明け、全国的に一気に“真夏モード”となっています。命にかかわる熱中症にならないためにこまめな水分補給はもとより、自分に合った「水道水をおいしく飲む方法」を見つけられたらいいですね。