晩秋を粋に楽しむ!酉の市のあれこれ

2016/11/10 16:30

ハロウィンが終わると、街中では12月のクリスマスに向けて、準備があわただしくはじまります。 そうしたイベントに比べるとやや忘れられがちな印象もありますが、11月にも関東地方を中心に、晩秋の風物詩ともいえるイベントがあります。それが、毎年11月の酉の日に開かれる「酉の市」(明日11日は一の酉!)です。 各地の大鳥・鳳・鷲(おおとり)神社では、境内や参道に縁起物の熊手を売る露店が並び、今年一年の無事を感謝し、来年の福を願おうと、縁起物の熊手を買いに来る人々で、夜遅くまで賑わいます。

晩秋の風物詩、酉の市。商売繁盛、幸せをかき入れるといわれる縁起物の熊手を買いに多くの人が訪れる
晩秋の風物詩、酉の市。商売繁盛、幸せをかき入れるといわれる縁起物の熊手を買いに多くの人が訪れる
酉の日ってどんな日? 酉の日というのは、日を干支で表した際に、「酉」に当たる日です。 干支というと、例えば「2017年の干支は酉年」というように、今でも年を表すのに用いられていますが、以前は月や日、時間の順序や、さらには方位を示す言葉としても使われていました。 十二支なので酉の日は12日に1回めぐってきます。カレンダーを基準に考えると、その年によって酉の日は変わります。11月中には2回から3回あり、それぞれ一の酉、二の酉、三の酉と言います。 三の酉まである年は、火事が多いという俗信もありますが、今年、2016年の酉の市は、11月11日と23日と二の酉までです。
十二支が日付も表す
十二支が日付も表す
酉の市のはじまり 酉の市の由来については諸説あります。 鷲神社にお祭りしている神様、日本武尊(やまとたけるのみこと)にちなんだという神道に由来するという説もあれば、仏教的な起源があるなど、さまざまな伝承があります。 ただ、今に伝わる酉の市は、葛西花又村(足立区花畑)にある鷲神社のお祭りが発祥と言われています。 「酉の祭(とりのまち)」が転じて「酉の市」になったなど、その名前の由来にも諸説ありますが、もともとは鷲神社の別当、正覚院のお祭りに、生きた鶏を献上して開運を祈願したお祭りだったようです。このお祭りは収穫祭という意味合いもあり、近隣の農民に境内で粟餅や八頭芋、そして農具や竹ぼうき、熊手などを売っていたのがはじまりです。 次第に縁起物としての熊手が売り出され、手締めの景気良さなどから商売繁盛を祈願する商家などが、毎年、熊手を買うようになったそうです。
農具として売られていた熊手が縁起物に
農具として売られていた熊手が縁起物に
浅草の酉の市が盛んになった理由 江戸時代の酉の市には、収穫祭や、冬至の後の太陽の復活や新春を迎えるお祭りという意識がありました。その様子は江戸の年中行事の一つとして、浮世絵でも格好の題材となって、歌川国芳や歌川豊国など著名な浮世絵師も描いています。 もともと、江戸の中心部からも離れたところにある神社のお祭りが人々に知られるようになった要因のひとつには、賭博があります。 この日行われる辻賭博の人気から酉の市はより多くの人に知られるようになりましたが、賭博が禁止されるようになると、次第に参詣者も減ってしまいました。かわって浅草の鷲神社と長国寺が、酉の市で賑わうようになります。近くにあった幕府公認の遊郭、新吉原もこの日は出入りが自由になったことから、多くの人が集まるようになりました。 花又村(花畑)の酉の市は「大酉」、または「本酉」と呼ばれていたのに対し、浅草の酉の市は「新酉」。さらに千住にある勝専寺の酉の市「中酉」と、江戸時代にはこの3つの酉の市が盛んでした(花又村(花畑)を「上酉」、勝専寺を「中酉」、浅草を「下酉」ということもあります)。
毎年たくさんの人出で賑わう浅草の酉の市
毎年たくさんの人出で賑わう浅草の酉の市
値切って値切って値切らない?熊手の粋な買い方 酉の市で売られる熊手は、幸せを「かき込む」という願いが込められた、商売繁盛、招福の縁起物です。 宝船や大福帳、長寿をあらわす鶴、当たり矢、稲穂、おたふく、大判小判や、打ち出の小づちなど、お目出たいもので飾り立てられています。 熊手の買い方も、値切れば値切るほど縁起が良いとされています。 今では露店によって価格が定められていますが、昔は売り手と買い手のやり取りで価格が決められました。 ちなみに、値切って、値切って、さらに値切って、商談が成立したら、値切る前の最初の金額を支払い、お釣りはもらわないのが、粋な江戸っ子の買い方だそうです。また、初めの言い値と買値の差額を、ご祝儀として渡すのが粋という人もいます。 こうして商談が成立すると、威勢よく手締めが打たれます。 買った熊手は、福を取り込みやすいように玄関や、神棚などに飾ります。また、毎年、熊手は大きいものに買い替えます。 ── 酉の市は、「酉(とり)」という音から「客を取り込む」と商売繁盛や開運の信仰を集めるようになったとも言われています。今では熊手の値段交渉はあまり見られないようですが、価格ではなく、売り手とのやり取りを楽しもうとする江戸の人たちの姿、そのものが粋ですね。 参考:『日本の年中行事事典』(吉川弘文館)、『もっと!くらしたのしむ なごみ歳時記』(永岡書店)、『市田ひろみの日本人でよかった 年中行事としきたり』(東京書籍) 参考HP:酉の寺長國寺、浅草鷲神社
売り手とのやり取りを楽しむのが熊手の粋な買い方
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