日本が真夏の暑い日々をよそに、地球の裏側ブラジルでは過ごしやすい気候の中、4年に一度のスポーツの祭典が開催されています。
200を超える国と地域が参加するこの大会では、様々な国の国歌を聞くことができるのも世界的イベントならでは。
日本だけでなく、世界のほとんどの国で国歌が存在しますが、その成り立ちについてはあまり知られていないかもしれません。
今回は日本だけでなく、海外の興味深い国歌のエピソードに迫りたいと思います。

外交儀礼では欠かせないのが「国歌」
外交儀礼では欠かせないのが「国歌」

8月12日は「君が代記念日」

1893年8月12日、当時の文部省が「小学校儀式唱歌用歌詞並楽譜」という訓令を布告。
小学校の祝日や大祭日の唱歌として8曲が定められた中の1曲が『君が代』でした。
以来、事実上の国歌として『君が代』が伝えられてきました。
ですが、正式に『君が代』が国歌と明示されたのは1999年の国旗国歌法が制定されてからと、意外にも最近の出来事でした。
ただ、『君が代』という曲自体の歴史は古く、その歌詞は『古今和歌集』に収められている短歌のひとつではないかといわれています。
その短歌がこちら。
──我が君は 千代にやちよに さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで──
なぜか『君が代』とは初句が違うのです。
どうして「我が君は」ではなく「君が代は」になったのかという謎については、識者の見解も様々……。
気になる方は記念日をきっかけに調べてみてはいかがでしょうか。

世界で初めての国歌は?

国歌が誕生したのは近代西洋の時代だといわれています。
もともとは外交儀礼の場において披露するために作られたというヨーロッパ諸国の国歌。
最も古いといわれている国歌はいくつかありますが、中でも一番古くに作曲されたのはオランダの『ヴィルヘルムス・ファン・ナッソウエ』とされています。
この曲は16世紀の後半に起こった「八十年戦争」を指揮したオラニエ公ウィレム1世を題材として作られたもの。
八十年戦争は、その当時スペインの植民地であったオランダが独立しようと反乱を起こした戦争でした。
ウィレム1世がともに反乱を起こす同志を鼓舞するような歌詞になっていて、曲調もかなりの重厚感があり、荘厳なもの。
なんと、歌詞が15番まであるというのだから驚きですが、実際に行事などで流されるのは1番と6番とのことです。

オランダを象徴する風車のある街並み
オランダを象徴する風車のある街並み

歌詞がない国歌をもつ国は?

そんなオランダとの因縁をもつスペインですが、こちらも最も古いといわれる国歌のひとつなのです。
最も古くに国歌として認められたのがスペインの国歌『国王行進曲』といわれています。
不思議なことに作曲者は不明で、当初は『擲弾兵行進曲』と呼ばれていました。
しかし、1770年に当時スペインの王であったカルロス3世がこの曲を「名誉の行進曲」と気に入っていたことから公式行事で演奏されるようになったのです。
そのため、民衆もこの曲を国歌だと認めるようになり、『国王行進曲』と呼ばれるようになりました。
雄大で堂々とした曲調はまさに『国王行進曲』の名にふさわしいもの。
歌詞がないというのもスペイン国歌の特徴です。
──国歌には、その国の歴史、成り立ちや理想の姿が表現されていることが多いもの。
4年に一度の祭典とともにたくさんの国を知るのによい機会となりそうですね。

スペインの王族ゆかりの場所・マドリード
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