新緑や季節の花を楽しみに、登山やハイキングに出かける方が増える季節です。
この時季、標高の高い場所で気をつけたいのは「天候」と、それに伴う気温の変化。
「急に霧が出て来て、道に迷いかけた」「山麓では暖かかったのに、急に気温が低下」……こんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
リーダーやガイドさんに頼りきっていては、想定外の事態に対応できないことも!
春から初夏のハイキングで心がけたい、準備についてまとめてみました。

標高、緯度、天候……複数の情報をチェック
標高、緯度、天候……複数の情報をチェック

なぜ「山の天気は変わりやすい」?

山で風が吹くと、その風は「斜面に沿って」昇っていきます。
すると、上昇気流が発生し、やがて雲ができます。
とくに注意したいのが、海から吹く「湿った風」。
この風が斜面に沿って上昇すると、霧や雲が発生し、雨が降りやすくなるのです。

1000mの標高では「1カ月前の気候」を目安に

「標高が100メートル高くなると、0.6度気温が下がる」……というのは、ご存じの方が多いですよね。500メートル登るとおよそ「3度」、1000メートル登ると「6度」下がる計算です。
この「6度」の違い、春の季節進行では「約1カ月」に相当するそう。つまり、この時季に1000メートル登ると、平地での「1カ月前の気候」を味わうことになります。
さらに意識したいのが「緯度」。
緯度が1度(111キロ)北上すると、気温は約1度低くなります。
つまり、1000メートル登ると、約666キロ「北に移動」するのと同じ気候を体感することになります。
行き先の場所(緯度)や標高、さらに予想される天候など……。複数の条件を考えながら、服装や装備の準備をするのが大切です。

「晴れ」の「日帰り」でも、必ず雨具と防寒具を

平地で汗をかくほどの好天でも、山間部では雲が出て日が陰ると、急に気温が下がることがありますし、「晴れ」の天気予報が出ていても、局地的に天候が悪化するのもよくあること。
さらに、日帰りの予定でも何らかの事態で帰れなくなる(翌日は雨)、などということもあり得ます。
衣服が濡れ、強風にさらされると、「低体温症」や「疲労遭難」の危険性が一気に高まります。
雨具、防寒具は、季節を問わず「絶対に用意」してくださいね。

登山やハイキングに出かける方が増える季節
登山やハイキングに出かける方が増える季節

注意したい、「発達する低気圧」と「梅雨前線」

お出かけ前に気になるのは「天気予報」。
山は県境にあることが多いので、隣接する都道府県(地域)の天気予報も併せてチェックしておくと安心です。
天気図を見る時に気をつけたいのが、「等圧線の間隔」。等圧線の間隔が「狭い」時は、強い風が吹く恐れがあります。
春や秋に多い、「発達しながら通過する低気圧」にも、要注意です。
実況天気図と予想天気図を比較して、予想される低気圧の「中心気圧」が急激に下がっている場合は、大荒れの天気になる可能性があります。
これからの時期は、「梅雨前線」にもご注意を。
前線の近くにある山、前線上に低気圧がある場合はその「南にある山」は、天気が悪くなりやすい状態です。
天気予報の精度が上がった分、一人ひとりの状況判断能力が鈍っている……という話もあります。
ちょっとした予備知識があれば、自分の目で判断できることもたくさんあります。たとえば、凸レンズのような「レンズ雲」や、山頂にかかった「傘雲」は、上空で強い風が吹いているサインです。
疲れや寒さに長時間さらされると、判断力が鈍ります。あらかじめアクシデントを想定しておけば、「想定外」を減らすことができます。十分な準備をして、登山やハイキングを楽しんでくださいね。
参考:平井史生「登山・ハイキングを安全に楽しむための よくわかる山の天気」(誠文堂新光社)
隆之・廣田勇介「山の天気リスクマネジメント」
参考:村松照男「天気の100不思議」(東京書籍

レンズ雲や傘雲は、強風のサイン
レンズ雲や傘雲は、強風のサイン