ところ変われば、印象も変わるのが「雪」。
北国ではごく当たり前の積雪でも、東京では「大雪だ!」と騒動になり、電車はストップ……なんてこともよくありますよね。
降り続く雪にウンザリしながらも、美しい雪景色に思わずハッとさせられる。
雪がたくさん降る土地に住んでいる人も、そうでない人も、きっと雪にまつわる何らかの思い出をお持ちなのではないでしょうか?
今回は、そんな「雪」にまつわる言葉をたくさんご紹介します。

家々の屋根や、木の枝に積もる雪に、昔の人は何を思ったでしょう
家々の屋根や、木の枝に積もる雪に、昔の人は何を思ったでしょう

「植物」や「動物」にたとえられた呼び名

結晶が6つの花弁に見えることから「六つの花」「六出花(りくしゅつか)」などとも呼ばれる雪。
結晶がたくさんくっついて、まるでボタンの花びらのように大きな雪片になって降るものを「牡丹雪」とも言いますね。
「風花」とは、初冬の風に吹かれながらチラチラ降る雪のこと。まるで花のように舞い降りる様子から「雪花(せっか)」「花びら雪」という呼び名もあります。「銀花」「銀華」……こんな美しい呼び方もあるようですよ。
ところで、「鶴雪(かくせつ)」という言葉を聞いたことがありますか?
大雪のことで、中国の故事に由来した言葉なのだそう。興味がある方は調べてみてくださいね。

「食べ物」や「日用品」にたとえられた呼び名

粉雪の別名は、「粉米雪」「小米雪」(読み方は「こごめゆき」)。
砕いた米粒のように細かいことから、その名がつきました。
ざらめ糖のように大きな粒でできた「ざらめ雪」。春が近づくと、積もった雪が昼間は溶けて、夜に再び凍ります。
それを繰り返すうちに結晶が大きくなり、ざらめ状になったものがこう呼ばれます。
話は横にそれますが、白い食べ物を雪にたとえることもよくありますね。「雪」という名前のついた和菓子や、雪のように真っ白に作った和菓子が思い浮かびます。
フランスのお菓子で有名なのは、雪山に見立てて生クリームをあしらったモンブラン。泡立てた卵白をゆでて固め、カスタードソースに浮かべた「ウフ・ア・ラ・ネージュ」(雪のような卵)というデザートもあります。
「雪ひも」という現象を見たことはありますか? 木の枝に積もった雪がずり落ちて、細長いひも状になったものです。次に雪が降った時は、ぜひとも観察したいもの。
また、昔の言葉で、寝具(夜具)のことを「ふすま」と言いますが、このふすまを広げたようにあたり一面を覆い尽くした雪が「ふすま雪」です。

友達を待っている? 村に遊びに来る? 「擬人化」される雪

いつまでも溶けない雪に、昔の人は「次の雪が降るのを待っているようだ」と考えたようです。
「友待つ雪」「雪の友」などの言葉が残っています。
その年の降り納めの雪を「忘れ雪」、「名残りの雪」などと呼ぶことも。
さんざん悩まされても、いざ溶けてしまうとなると寂しくなる……そんな複雑な心情が伝わってくるようです。
そういえば、アイヌ語で雪を表す言葉は「ウパシ」。「ウ」=互い、「パシ」=走る、という意味があります。昔、アイヌの人びとは、雪は天から競争しながらアイヌの村に遊びに来ると考えていたのだそう。だから、こんな面白い名前がついたのですね!
雪にまつわる言葉、いかがでしたか? ちなみに、お正月の三が日に降る雨や雪は「御降(おさがり)」と呼ばれ、豊作の吉兆だそうですよ。
雪おろしや雪かき、転倒の危険など積雪のシーズンは心配も尽きませんが、雪にまつわる言葉を知れば、少しだけ心豊かに過ごせるかもしれません!
参考:筆保弘徳監修・著/岩槻秀明・今井明子著「気象の図鑑」
萱野茂著「アイヌ語辞典 増補版」
鈴木心著「てんきごじてん―風・雲・雨・空・雪の日本語」