昭和のころ、台風のニュース等で耳にした気圧の単位は確か、「ミリバール」だったような…。それがいつの間にか、耳慣れない「ヘクトパスカル」という単位になり、今では何の違和感もなく使われています。そういえば、気圧の単位が「ミリバール」から「ヘクトパスカル」と言われるようになったのは、一体いつからだったのでしょうか。また、どうして変える必要があったのでしょう。

画面の「925hPa」。昭和のころには「925ミリバール」と表記されていた。
画面の「925hPa」。昭和のころには「925ミリバール」と表記されていた。

平成4年に「ヘクトパスカル」 に変わった。意味は 「ミリバール」 と同じで、圧力を表す単位。

日本では戦前、気圧の単位は「水銀柱ミリメートル」が使われていました。水銀を細い管に入れて気圧を測るというもので、現在でも身近なところでは、手動の血圧計で見ることができます。単位記号は「mmHg」。血圧の単位でおなじみです。たとえば、血圧が「上が120、下が80」だとしたら、単位を添えて正しくいうと、「上が120水銀柱ミリメートル、下が80水銀柱ミリメートル」となります。
第二次世界大戦後、圧力の単位は「ミリバール」が使われるようになりました。単位記号は「mbar」。1バールは1気圧に値がほとんど近く、平成4年まで、台風の単位としても使われていました。昭和時代にはなじみの深い単位です。
1992年(平成4年)12月から、「国際単位系(SI)」という、国際基準の単位に合わせるため、国際単位系ではない「バール」をやめて、「ヘクトパスカル(hPa)」が用いられるようになりました。数値でみると1 hPa=1 mbar。値は同じなので、単位の移行に問題はありませんでした。今では台風の単位として、「ヘクトパスカル」がすっかり定着しています。
昔はそれぞれの国で独自に長さや重さの単位がありました。日本では長さの尺や寸、重さの貫や匁(もんめ)、体積の斗や升など。また、英国や米国ではフィートやインチ、ポンドやオンス、ガロンなどが使われています。これらをいちいちcmやkgに換算すると…と考えるのは不便なときもありますね。国際単位系では、長さはm、重さはkgが基本単位として定義されています。
参考サイト:学研サイエンスキッズ「科学のふしぎたんけん 環境なぜなぜ110番」 ヘクトパスカルとはどういう意味ですか?

「ヘクトパスカル(hPa)」 が意味するものは…

よく台風のニュースで、「中心気圧は950ヘクトパスカル」などといっています。この数字が低ければ低いほど、台風の勢力が強いことはご存じの通りです。
この「ヘクトパスカル」は、「ヘクト」と「パスカル」に分けられます。
「パスカル(Pa)」は圧力の単位で、1Pa=1N/m2(ニュートン毎平方メートル)です。N(ニュートン)は力の単位です。つまり、1平方メートルあたりに、どれくらいの力がかかっているかを表しているのが、「Pa(パスカル)」です。
「ヘクト(h)」は、k(キロ)やM(メガ)と同じように、単位の頭につける記号で、100倍という意味です。広さを表す単位「アール(a)」の頭に「ヘクト(h)」がついた「ha(ヘクタール)」という単位は、よく目にしますね。
つまり、1hPaは1Paの100倍ということです。
参考サイト:東京書籍「教科書・図書教材 よくある質問Q&A」 圧力の単位としてPaを取り上げた理由はなんですか?

「パスカル」、「ニュートン」…。人物名が単位に。子どもの理科の教科書を見て親がビックリ !!

「N(ニュートン)」という単位は、平成14年度(2002年度)から中学の教科書に登場しました。平成以降に生まれた子どもの中学理科の教科書に「N(ニュートン)」という単位が載っていて、今、40代くらいの方は、お子さんの教科書に見慣れない単位があるのを見て、ビックリしたことはないでしょうか。
「N(ニュートン)」は、力の単位です。万有引力の法則を発見したアイザック・ニュートンにちなみ、1948年に「N(ニュートン)」という単位が正式に採用され、国際単位系でも使われています。昭和のころは、「kg重(きろぐらむじゅう)」という単位が使われていましたよね。今の中学校の理科では、「1Nは質量が約100gの物体にはたらく重力の大きさ」と定義されています。
一方、「人間は考える葦である」という名言で有名なパスカルですが、「パスカルの原理」という言葉に記憶はありませんか。これは、流体における圧力の伝わり方に関する基本原理で、現在の化学や物理の基礎となっています。このような、圧力に関するパスカルの功績をたたえ、1971年に国際単位系で「Pa(パスカル)」という圧力の単位が正式に採用されました。こちらも理科の教科書で扱われています。
「ヘクトパスカル」を説明するときに、上でも説明したとおり、1Pa=1N/m2という式が必要ですが、この1つの式に、「パスカル」と「ニュートン」という、人物名に由来した単位が2つも入っています。また、これ以外にも、人物名に由来する単位はたくさんあります。たとえば、ワット、ヘルツ、ガウス、マッハなど、なじみ深いものも数多くあります。これから日本人が物理や化学で大きな発見をしたら、もしかしたら名前が単位として採用され、「1スズキ」や「10タナカ」と数えるものが出てくるかもしれませんね。
参考サイト:学研出版サイト「親子のギモンを解決! 編集部によくくる質問」 第3回 1ニュートンって何キログラム? 【理科】

ニュートンはリンゴが落ちたのを見て、「万有引力の法則」を思いついたといわれる。
ニュートンはリンゴが落ちたのを見て、「万有引力の法則」を思いついたといわれる。