昨日は太平洋側で激しい雨が降ったりやんだり……と、星空を仰ぐことが難しい梅雨空が続いていますが、皆さんは「星」にまつわるお話というと何を思い浮かべますか?
もしかしたら、ギリシャ・ローマ神話を連想する方も多いのでは?
星はどこからでも誰にでも見ることができるもの、だからこそ、世界中の文化や生活と結びついた伝説がたくさん残っています。
そこで今回は、夏に観測できる星を中心に、日本とアジアに伝わる星物語をご紹介。
これまでとは違った気持ちで星空を楽しめるようになるかもしれません!

夏の夜空を流れる壮大な「天の川」に、昔の人はどんな思いを馳せていたのでしょう……?
夏の夜空を流れる壮大な「天の川」に、昔の人はどんな思いを馳せていたのでしょう……?

織姫さんは「まな板」も愛用? 彦星さんは牛でなく「犬」飼い?

もうすぐ七夕ですから、おなじみ織女星(こと座のベガ)と牛郎星(わし座のアルタイル)のお話から始めましょう。
七夕伝説は、紀元前1000年ごろの中国の書物に記されていた物語が、アジア各地に伝わったもの。日本に伝わったのは奈良時代だと言われます。
星がきれいに見える場所で探してほしいのが、ベガの少し下にある「まな板」。
4つの星が、ちょっと右に傾いた平行四辺形を描いている様子から、「まないた星」という呼び名があるそうですよ。
一方、アルタイルにつきものなのが「動物」。
両隣に小さな星があるのが、まるで動物を連れているようだと昔の人は思ったのでしょうか。
七夕伝説が伝わる前、アルタイルは「犬飼い星」「犬引き星」などと呼ばれていたそうです。

天の川にまつわる伝説も、多種多様です

夜空を流れる「天の川」。この天の川についての伝説も、アジア各地に残っています。
まず、インドに伝わるのは、皇帝の娘「ガンガー」の物語。
インドラ神の要求に応じて天に上ったガンガーは、天界で川となり、世界を清める存在になりました。
ちなみに、有名なガンジス川が別名ガンガーと呼ばれるのは、このガンガーを「人々の罪を清めるために」地上に降ろした、という伝説に由来しているそうですよ。
そして、タイ北部に伝わる天の川伝説は、とても悲しい物語。
カチン族と争って滅ぼされたルア族の人びと。生き残った呪術師が、空に白い布の道をかけました。亡くなった人びとがそれを通って天に上り、星となったのが天の川だと言われています。
3つめにご紹介するのは、沖縄の歌集「おもろ草紙」に収録された航海歌。
「天の川は神さまのすてきな帯」……こんな意味の一節が残っているそうです。
天を横切るほどに豪華な、星で織り上げた帯……。そんな帯を締める神さまは、いったいどんなお姿なのでしょうね!

さそり座は「釣り針」? 海洋民族のイマジネーション

夏の星座として有名な「さそり座」。さそりの心臓のように赤く輝く星「アンタレス」が有名ですね。
アジアでは、S字型に星が並んでいる形状から「釣り針」を連想した人びとが多かったようです。
ハワイに興味がある方なら、英雄マウイが海底から大地を釣り上げた時、空に放り上げた釣り針が星座になったという伝説をご存じかもしれません。日本でも、「魚釣り星」「鯛釣り星」などと呼ばれていたそうです。

さそりの心臓のように、ひときわ赤く輝く星「アンタレス」
さそりの心臓のように、ひときわ赤く輝く星「アンタレス」

誰でも簡単に見つけられる、西の空の2つの「惑星」

最後に、都会でも肉眼で簡単に見つけられる2つの星をご紹介。
夕方から宵の口にかけて、西の空に並んで輝く2つの目立つ星……。気になっている方も多いのではないでしょうか?
2つの星のうち、ひときわ大きく見える白い星が「宵の明星」=金星です。
その明るさは、なんとマイナス4等級!  星座の星たち(恒星)とは明らかに違う輝きなので、すぐにわかるはずです。西洋では美の女神とされる金星。インドでは死者を復活させる力を持つ男性神と考えられているそうですよ。
金星よりも少し小さめの、クリーム色の星が「木星」です。
「歳星」(さいせい、としぼし)という別名がありますが、これは天を12に分け、木星の見える位置で「今年が何年か」を判定していた古代中国の天文学に由来しています。木星は太陽のまわりをおよそ12年で一周するため、このような呼び名が生まれたのですね。
夏は、空気のきれいな場所にお出かけする機会が増える季節。ぜひ、星空を見上げてみてくださいね!
参考:「アジアの星プロジェクト」海部宣男監修「アジアの星物語 東アジア・太平洋地域の星と宇宙の神話・伝説」林完次「宙の名前 新訂版」

夜空を彩る「金星」「月」木星」の縦列(上から)
夜空を彩る「金星」「月」木星」の縦列(上から)