スイスと日本を行き来するファンドマネジャー霜見誠さん(51)と妻の美重さん(48)が昨年12月に失踪(しっそう)した事件は、2人の遺体が埼玉県久喜市で見つかり、最悪の結末を迎えた。実行犯の渡辺容疑者は逮捕されたが、事件の背景には何があるのか。

 実は、誠さんは、ある投資家から民事訴訟を起こされていた。

 訴状などによると、この投資家は2008年ごろ、ドバイで不動産・株式投資を行っていたM社に湾岸協力会議(GCC)諸国の上場企業などへの株式投資のためとして5千万円を預託した。M社社長は誠さんの指示で、このうち3千万円を、別の会社名義でスイスのプライベートバンクに預金。結局、この3千万円は無関係の女性の手に渡り、投資家に返金されなかったという。

 投資家の代理人は「一連の資金の流れにはAという人物がかかわっていたとみられ、金を手にした女性はAの愛人でした。Aはすでに病気で亡くなっていますが、誠さんはAの指示で動いていたようです」と話す。

 また、誠さんがマネジャーを務めるジャパン・オポチュニティ・ファンドは07年にジャスダック上場の「クロニクル」の新株予約権付社債を13億5千万円引き受けている。クロニクルは宝飾事業などを手がけており、タレントの山口もえさんの元夫、尾関茂雄氏が役員を務めていたことでも知られる。ジャパン社は11 年にも再び、クロニクルの新株予約権を引き受けた。

 このクロニクル社は昨年12月に開示検査を受け、1月25日、「一部の会計処理の訂正を要する可能性のある事象が判明」し、「金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑義に関する事実関係の調査分析をする」とするIR情報を発表。第三者委員会の設置を決めた。

 誠さんは、闇の世界が見え隠れする仕事をしていた。現在、主犯として逮捕されている渡辺容疑者は闇世界の差し金で犯行に及んだのか。

「事件後、元従業員の共犯者に、誠さんのクレジットカードで新幹線の回数券300万円分を買わせようとし、不審がられ通報されています。防犯カメラやNシステムにも形跡を残しており、逃げた場所も宮古島と中途半端。素人の手口です」(社会部記者)

AERA 2013年2月11日号