『ノー・サブスティテューションズ~ライヴ・イン・大阪』ラリー・カールトン&スティーヴ・ルカサー
『ノー・サブスティテューションズ~ライヴ・イン・大阪』ラリー・カールトン&スティーヴ・ルカサー

 1998年に来日したミュージシャンの参加作は14作と、前年の3分の2に落ちた。ホール録音を含むスタジオ録音は5作あり、日本人との共演は4作、すべて和ジャズだ。ライヴ録音は9作あり、日本人との共演は6作、4作が和ジャズだ。候補作からラリー・カールトン&スティーヴ・ルカサー『ノー・サブスティテューションズ~ライヴ・イン・大阪』を取り上げる。選外作はデータ欄の【1998年 選外リスト】をご覧ください。

 ラリーを知ったのは「クルセイダーズ」の『アンサング・ヒーローズ』(Blue Thumb-以下同じ/1973)か『スクラッチ』(1974)だ。まだゲストだった。やがてメンバーになり、『サザン・コンフォート』 (1974)、『チェイン・リアクション』(1975)、『南から来た十字軍』 (1976)、『旋風に舞う』(1977)と続くが、『十字軍』での活躍には舌を巻いた。とはいえ見事に張り倒されたのは退団後に発表した『夜の彷徨』(Warner Bros./1978)だ。フュージョンの記念碑である同作をいまだ愛聴している老ファン!も少なくないのでは。

 初来日は1974年11月、「クルセイダーズ」のメンバーだった。独立後は77年と『夜の彷徨』がヒットした78年に続けて来日している。1980年代は80~82年、87年の4度しか確認できないが、91年から「ブルーノート」での公演がほぼ恒例化、98年にはラリーを「センセイ」と敬愛するスティーヴ・ルカサー(以下、ルーク)とのツアーが実現し、推薦盤が「ブルーノート大阪」で録音された。2001年に発表され、翌年のグラミー賞の最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞に輝いた名盤だ。

 《パンプ》はルークが敬愛する1人、ジェフ・ベックの『ゼア・アンド・バック』(Epic/1978-79)から。ゆったりした中速で。ルークとラリーのイントロ、合奏に続き、ルークが激情を迸らせ、ラリーがクールに弾き進め無理なく絶頂に達する。鳥肌ものだ。

 ラリー作《ドント・ギヴ・イット・アップ》は『夜の彷徨』から。快速シャッフルで。ラリーのイントロ、合奏、炸裂感漲るルーク、ブギ・ウギ・ピアノで弾けるジャクソン、くねりまくるラリー、ドラムスをフィーチャーしたアウトロと続く。一気呵成の熱演だ。

 ラリー作《オンリー・イエスタデイ》もまた『夜の彷徨』から。スロウ・バラードで。ジャクソン、ラリーのイントロに続きラリーとルークが交互にリード、ラリーがしんみり綴ればルークは嘆きをぶつけラリーが引き取る。ラリーの表現力に唸らされる感動編だ。

 マイルス作《オール・ブルース》は『ラスト・ナイト』(MCA/1987)でも取り上げた。やや速めの中速で。ルークがリードするイントロ、合奏を経てルークが先発。マイルスにお構いなくホットにロックするルークと、クールにジャズするラリー、好対照の快演だ。

 ラストは『夜の彷徨』の巻頭曲で同作をヒットに導いたラリー作《ルーム335》だ。ルバートでからむイントロからやんやの喝采、やや速めの中速でインテンポして合奏へ。続くルークの男気とラリーの歌心にちょちょぎれた。聴き所を凝縮した編集も好ましい。

 ラリーのライヴは7作あり5作が日本録音、4作がゲスト(ギター)を迎えたものだ。ロベン・フォードとの『ライヴ!』(335 Records-以下同じ/2006)、デイヴィッド・T・ウォーカーとの『ライヴ・アット・ビルボード・ライブ東京』(2014)ではゲストを立てた格好で、ラリー目当てだと不満が残る。ルークとの続編『ライヴ・アット・ブルーノート東京』(2015)の音楽性は推薦盤を凌ぐが、ルークの出来が勝るだけにロック色が濃い。ライヴの覇気と熱気に溢れ、互いに敬意を払いつつ個性をぶつけあった推薦盤が一番だ。

【1998年 選外リスト】】fine>good>so-so>poor
Blues & Ballads in the Night/Junior Mance (Paddle Wheel/February 28) fine-
Tokyo in F/Ken Field (Sublingual/August) fine-
Last Swing of the Century/Ken Peplowski (Concord Jazz/November 7) good~
Wake Up with the Birds/Carlo Actis Dato-Kazutoki Umezu (Leo/November 15) good+

【収録曲】
1. The Pump 2. Don't Give It Up 3. (It Was) Only Yesterday 4. All Blues 5. Room 335

Larry Carlton (el-g: left side), Steve Lukather (el-g: right side), Rick Jackson (key), Chris Kent (el-b), Gregg Bissonette (ds, per).

Recorded at Blue Note Osaka, in November 1998.

【リリース情報】
2001 CD No Substitutions: Live in Osaka/Larry Carlton-Steve Lukather (US-Favored Nations)
2001 CD No Substitutions: Live in Osaka/Larry Carlton-Steve Lukather (Jp-Favored Nations)

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