第18回 イーグルス《呪われた夜》~ドン・フェルダーをギター・ヒーローにした曲 |AERA dot. (アエラドット)

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第18回 イーグルス《呪われた夜》~ドン・フェルダーをギター・ヒーローにした曲

文・大友博

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 1970年代のロック界を象徴するバンドの一つであったイーグルスは、本サイトでの連載「西海岸編」でも触れたとおり、グレン・フライとドン・ヘンリーの二人がリンダ・ロンシュタットのバック・ミュージシャンとして親しくなったことがきっかけで結成された、つまり、70年前後の、ロレール・キャニオンやトルヴァドゥールを中心にした新しい音楽の波のなかから生まれたバンドだった。マルチ弦楽器奏者で、フライング・ブリトー・ブラザーズでも働いたバーニー・リードンと、ポコの初代ベーシストだったランディ・マイズナーが加わり、4人のメンバーそれぞれが曲を書けて歌えるというきわめて民主的な態勢でスタートラインに立った彼らは、1972年の春から夏にかけて、あの《テイク・イット・イージー》とファースト・アルバム『イーグルス』で第一歩を踏み出している。

 翌年春BBCに残されたスタジオ・ライヴを観ると、演奏面ではバーニーとランディが大きな存在感を示していることがわかるはずだ。グレンはリード・シンガー的なイメージを確立しているが、やがてバンドの「頭脳的存在」と呼ばれることになるドンは、デビュー作ではドラマーに徹していて、ソングライター/シンガーとして大きく関わったのは《ウィッチー・ウーマン》だけだった。

 しかしBBCライヴの時点ではほぼ完成していた思われる2作目『デスペラード』ではグレンとドンの書く曲が大半を占め、ドンのちょっとかすれ気味のヴォーカルがイーグルスの「声」として認知されるようになっていく。と同時に彼らは初期のカントリー・ロック的なイメージからの脱却を模索しはじめた。

 具体的な動きが、ファーストとセカンドのプロデュースを手がけたグリン・ジョンズとの訣別。3作目の制作途中、2曲の録音を終えた時点である意味では恩人でもあった彼との関係を解消し、B.B.キングの《ザ・スリル・イズ・ゴーン》やジェイムズ・ギャング/ジョー・ウォルシュの一連のアルバムを手がけていたビル・シムズィクを迎えることになったのだ。何人かの候補のなかから、グレンとドンの頭のなかにあった目指すべき音を確実に実現してくれる人として、彼の名前が浮かび上がってきたのだろう。

 その仕切り直しセッションの後半、《オールレディ・ゴーン》と《グッド・デイ・イン・ヒル》に2曲に起用され、硬質なギター・ソロでグループの音に新しい要素を加えたのが、ドン・フェルダーだった。フロリダ州出身で、同郷で少し年下のトム・ペティや彼の仲間たちにとってはローカルヒーロー的な存在だったという彼は、さまざまなアーティストのバックで経験を積んだあと、以前からバーニーと親しかったことなどもあり、ごく自然な流れでセッションに迎えられたようだ。その2曲を収めたアルバム『オン・ザ・ボーダー』には「レイト・アライヴァル」の断り書きつきで正式メンバーとしてクレジットされている。

 5人編成となってライヴを繰り返し、新しい方向性を固めたイーグルスがふたたびシムズィクと取り組んで完成させた通算4作目『ワン・オブ・ディーズ・ナイツ/呪われた夜』が発表は75年秋。そのアルバムの、ドンとグレンがアル・グリーンを意識して書いたものだというタイトル曲の中盤、レスポールを抱えたフェルダーが、よく練られた美しいソロを、きわめて正確な音程と強烈な音圧で弾いている。1弦の20フレットからスタートするその約35秒のソロによって彼は、新たなギター・ヒーローとしての地位を手にしたのだった。

 イーグルスが初来日をはたしたのは、1976年2月のこと。武道館一階席南西の方角から観たように記憶しているが、そこにバーニーの姿はなく、フェルダーの隣にはジョー・ウォルシュが立っていた。二人のギターを生かした名曲が届けられたのは、その年の暮れのことである。[次回7/5(水)更新予定]


(更新 2017.6.28 )


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プロフィール

大友 博 (おおともひろし)

1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。

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