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第11回 ガンズ・アンド・ローゼズ《スウィート・チャイルド・オブ・マイン》~スラッシュのレスポール

文・大友博

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 前々回のコラムで触れたヴァン・ヘイレン、オジー・オズボーン、ジャーニーらの活躍と成功、あるいはモーターヘッドやアイアン・メイデンを中心にしたニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルの盛り上がりにも刺激されて、ということだったのだと思うが、1980年代初頭から後半にかけて音楽界では、新しいタイプのヘヴィ・メタル/ハード・ロック系バンドがつぎつぎと登場している。

 その筆頭が、86年発表の3作目『スリッパリィ・ホエン・ウェット』で驚異的な売上を記録し、日本でもたくさんのファンから熱狂的に支持されたボン・ジョヴィだろう。結果的にその現象は、エアロスミスやホワイトスネイクといったヴェテラン・バンドの復活を後押しすることともなった。そして当然のことながら、数えきれないほどのフォロワーたちが、それこそ、まさに「雨後の筍のように」という感じで登場してくるのだが、ちょうどMTV全盛期ということもあり、残念ながら、ルックスやイメージばかりが強調されていたような気がする。いくつかのバンドは「ヘア・メタル」という言葉で揶揄されたりもしたものだ。

 いろいろと差し障りがあるので、この問題にはこれ以上踏み込まないが、じつはギターに関しても、このころ、似たような事態が進行していた。おそらくはエディ・ヴァン・ヘイレンの圧倒的なプレイとその見た目のインパクトに引き込まれるようにして多くのギタリストが新時代的なイメージのギターを弾きはじめたため、ストラトキャスターやレスポールが影を潜めてしまったのである。エリック・クラプトンやニール・ヤングといったタイプのアーティストたちがやや低迷していたこととも無関係ではないだろう。もちろん、これもまた、いろいろと差し障りがあるので、優劣を語っているのではないということだけは、ご理解を。

 そこに、いわば救世主として姿を現したのが、ガンズ・アンド・ローゼズのギタリスト、スラッシュだった。ボン・ジョヴィ的な発想や音楽性へのアンチテーゼと受け止める人も多かったGNRの中心人物は、カリスマ的なヴォーカリスト、アクセル・ローズだったが、その隣に立ち、バンド全体のサウンドをリードしていくスラッシュはいつもレスポールを抱えていた。

 1965年にロンドンで生まれ、5歳のころロサンゼルスに移ったというスラッシュは、母親がアフリカ系アメリカ人のコスチューム・デザイナー、父親が英国人のグラフィック・アーティストであったこともあり、早くからアートやエンタテインメントの世界に興味を持つようになったようだ。そして十代半ばで本格的にギターをはじめ、さまざまな出会い、試行錯誤を重ねるうち、85年にガンズ・アンド・ローゼズとしての活動をスタートさせたのだった。ギターを身につける過程で何度も繰り返して聴き、刺激や影響を受けたのはレッド・ツェッペリンやジミ・ヘンドリックス、クリームだったという。

 1987年夏にリリースされ、《スウィート・チャイルド・オブ・マイン》などのヒットを送り出すこととなったGNRのメジャー・デビュー・アルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション』で彼が弾いていたのは、クリス・デリグというギター・ビルダーが手がけた59年製ギブソン・レスポールのレプリカだった。発表前に亡くなってしまったため、デリグ自身がその成果を目にすることはなかったが、完璧に再現されたその音と美しいフォルム、ジミー・ペイジ世代から多くのものを吸収したスラッシュのプレイによって、レスポールはあらためて憧れのギターとしての地位を取り戻したのだった。

 ちょうど10歳上ということになるエディ・ヴァン・ヘイレンとのつながりでいうと、スラッシュもまた、マイケル・ジャクソンのレコーディングに招かれていた。曲は91年発表『デインジャラス』収録の《ギヴ・イン・トゥ・ミー》。ライヴ風のミュージック・ビデオにも出演し、そこでもやはり、レスポールとともに強烈な存在感を放っている。[次回5/24(水)更新予定]


(更新 2017.5.17 )


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プロフィール

大友 博 (おおともひろし)

1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。