悲しみを生きる力に
東京都世田谷区で宮澤みきおさん一家4人が殺害された事件から12年の歳月が流れた。みきおさんの妻、泰子さんの姉で事件当時、隣に住んでいた絵本作家の入江杏さんが1月末、これまでの思いを綴った本を出版した。 本には在りし日のみきおさん一家の写真、長女、にいなちゃん(当時8歳)が描いた絵などが掲載されている。入江さんは長年、心ない報道、周囲の偏見、妹一家を助けられなかったという自責の念など悲しみの連鎖に悩まされるが、2006年に一家が大切にしていた子グマのぬいぐるみ「ミシュカ」を主人公にした絵本を出版。被害者遺族として時効撤廃運動にも参加し、10年には刑事訴訟法が改正され、時効廃止を実現させる。 だが、同年にこれまで入江さんを支えた夫が突然、倒れ、帰らぬ人となる。その翌年には事件の第一発見者となった母親も病で亡くすという耐え難い喪失体験を再び経験するが、それも乗り越え、東日本大震災の被災地など全国で絵本の読み聞かせ、講演などを行い、自身の体験をもとに悲しみの意味や大切さを今も語りかけている。
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