昨年末、東京から福岡市に移住した20代の男性はこう話す。
「自分の場合は、家族もいないし仕事もフリーランスだったので、すんなりと移住はできました。ただ、自分のまわりにも福岡に移住をしたいという人は多いんですけど、たいてい来ない。みんな口では『行く!』って言うんですけど……ホント、“行く行く詐欺”ですよ(苦笑)。ただ、住む環境や仕事を変えるって、心配や不安が絶えないもの。まぁ、実際やってみるとどうってことないんですけどね!」

 都市から都市への移住といえども、やはり移住後の不安ある。そこで、こうした不安を解消すべく、移住希望者が移住先での生活を具体的に形にしていくことが出来るよう、いま様々な形の“移住応援プロジェクト”が全国で活動している。各自治体主催の移住セミナーのみならず、NPO法人などの民間の団体によるセミナーも広がりをみせ、首都圏を中心に移住に興味のある若者たちが積極的に参加しているという。

 たとえば、かなざわ定住推進ネットワークによる『金澤町家情報バンク』では、現在空き家となっており、賃貸や購入ができる伝統的な金沢市の町家を紹介。あるいは長野市では、「ながのシティプロモーション」を立ち上げ、長野市の都市としてのブランド力を高めようとしており、それぞれの都市の特色を生かしたPRが見受けられる。また、岡山市は移住・定住するための情報サイト『おかやま生活』を開設し、行政や民間の支援サービス情報を積極的に流している。

 さらに最近では自治体や団体の枠を超えた“交流”も盛んになっている。たとえば11月30日には、大阪で「京都移住計画」と「福岡移住計画」がコラボレーションイベントを開催。実際にそれぞれの土地で生活している人や移住者らが数多く参加し、集まった約40名の参加者らと積極的にコミュニケーションがはかられた。ここでは、京都と福岡が競合するのではなく、共にその良さを分かち合うことで、ゆるやかに繋がりながら「生きたい場所で生きる人の応援をする」という、広い視野を持った移住プロジェクトの姿勢が見受けられた。

 自分の人生において、何に重きを置くのかを考えたとき、移住という選択肢も十分にある――そう考えている若者は確実に増えている。もちろん、東京の人口増加率は上がり続けており、今後もしばらく人口一極集中は変わらないだろう。しかし、東京を離れ他都市へ移住しても、確実に生活を営んでいくことが出来たという移住成功例が増加し、移住先の受け皿も広がっていくならば、若者たちは躊躇することなく、移住へと踏み切れるのかもしれない。そして、潜在的な移住希望者たちが続々と移住を「実行」した時、地方と都市の在り方も大きく変わってくるのではないだろうか。