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カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想
話題の新刊
2014/02/13 16:04
30年にわたりイタリアに暮らすジャーナリストが綴る出あいの記。2012、13年に文芸誌などに発表の20作を編む。古代、中世、近代が現在と共生する悠久の歴史的風土はそれだけで絵になるが、さすがに取材する人の筆は単なるスケッチにとどまらない。分析と批評のフィルターを通してこの国を洗う時代の波頭をとらえて鋭い。
表題作は、単身赴任も辞さずに会社組織の階段をのぼりつめ財を成したカテリーナの、夫にも一人娘にも離反された老後の孤独を描く。ここに大家族を仕切る骨太マンマの姿はない。南米からやってきて清掃会社の派遣労働者として働く女性デルマが直面する差別と偏見、排除(「硬くて冷たい椅子」)。明るく鷹揚なイタリア気質の定番イメージが覆る。在留資格の更新を重ねてきた著者の、異邦人の哀切に寄せる深い共感。
だがなおかつ本書に横溢するものは、やはりイタリアへの愛である。ミラノを中心に転居を繰り返し都市、農山漁村に住み人と交わりワインをハムをチーズを、会話を堪能する著者の“わがイタリア”を知る。
※週刊朝日 2014年2月21日号
カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想
内田洋子著


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