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政権交代とは何だったのか
2013/07/24 17:23
若者の投票率の低さが問題になっている。昨年12月の衆院選の投票率は59.3%で戦後最低だったが、中でも20代は37.9%、30代は50.1%。20代の3人に2人、30代の2人に1人は選挙に行かなかったことになる。今参院選の投票率も劇的に上がってはいまい。でも、どうして?
山口二郎『政権交代とは何だったのか』を読んで、忽然と理解した。本書自体は09年の政権交代の功罪を論じた民主党論だが、注目すべきは民主政治について書かれた第5章。そこで著者はいいきるのだ。
〈投票率が低い若者に対する啓発は滑稽ですらある。学校教育では政治の争点に踏み込むことはタブーである〉。これでは〈二〇歳になったら選挙に行きましょうという宣伝はうるさく響くだけである〉。
その通り! というしかない。若者たちが選挙にも政治にも無関心なのは「ひいきのチーム」も「ひいきの陣営」もないからだ。「巨人阪神戦? なーにそれ」という人が野球場に足を運ぶだろうか。「なぜ選挙に行かないのか」と問う人には「なぜあなたはAKB48の選抜総選挙に参加しないのか」と問うてみよう。関心のない人は前田敦子と大島優子と高橋みなみと篠田麻里子と指原莉乃の区別がつかず、投票のしようがないだろう。それと同じ。
〈市民が民主主義を担うに足るだけ成熟するということは、それぞれ価値観や信念を持ち、それに照らして政治家や政党を評価する能力を身につけるということである。つまり、党派性を自覚することが、市民として成熟する条件である〉
山口さんはそこまでいわないが、要は「あんたは右か左か」という話である。55年体制の中選挙区制下では「保守/革新」「右派/左派」の対立軸が目に見えやすく、党派性も自覚しやすかった。「右だ左だはもう古い」という声もあるけど、ほんとかな。今日の低投票率は若者から政治性を剥奪し続けてきた結果なのよ。イベントとして投票だけしたって政治参加とはいわないでしょ。
※週刊朝日 2013年8月2日号
政権交代とは何だったのか
山口二郎著


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