イラスト:佐野文二郎
イラスト:佐野文二郎

 正統派ノンフィクション『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』から、プロ野球本の奇書『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた!』まで、球界の光と闇を書き続けるノンフィクションライター長谷川晶一。最新作『プロ野球ヒストリー大事典』は、日本プロ野球の約90年にも及ぶ歴史(正史・秘史・俗史)を佐野文二郎の膨大なイラストと写真で明解にまとめた集大成(!?)的作品。そのPART2「キーワード別 日本プロ野球史」から「暗黒時代史」を紹介する。

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■高橋ユニオンズは3年間で消滅、権藤正利は怒涛の28連敗を記録

 わが世の春を謳歌するチームがある一方で、どんなにもがいても、あがいても、真っ暗なトンネルから抜け出せない暗黒時代に苦しむチーム、選手もいる。

 1954(昭和29)年、球界再編騒動によって誕生した高橋ユニオンズ。「日本のビール王」と称された高橋龍太郎オーナーが、球界発展のために私財を切り崩してチーム運営をしたが、創設初年度の54年こそ53勝84敗3分で、8チーム中6位になったものの、55年は勝率.300、56年は勝率.351で、いずれも8位。この年限りでチームは解散。わずか3年の「最弱球団」と揶揄された。

 この頃、(悪い意味で)話題となったのが大洋・権藤正利投手の連敗記録。55年7月から57年6月まで、およそ2年間、まったく勝ち星を挙げられずに、怒涛の28連敗を記録。57年7月7日に待望の白星を記録した。苦難の道を歩んだ権藤だが、73年まで現役生活を続けた。

 50年の2リーグ制発足と同時に誕生したものの、球団創設以来なかなか優勝できなかったのが広島とヤクルトだ。広島は75年、途中でジョー・ルーツの後を継いだ古葉竹識の下で、空前の「赤ヘルブーム」を巻き起こして、創設26年目にして初優勝。

 遅れること3年、78年には広岡達朗監督率いるヤクルトも創設29年目で初優勝。日本シリーズでは、当時黄金時代の真っただ中にあった阪急ブレーブスを倒し、悲願の日本一に輝いた。

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しかし、ヤクルトの栄華も長くは続かない…