日本でも16日から緊急事態宣言中の6都府県に供給が始まる(gettyimages)
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――日本では「原則40歳以上」という方針が発表されていますが、なぜなのでしょうか。

 今回、このワクチンをイギリスで打ったところ、血管の中で血液が固まる病態を起こす可能性があるということがわかってきました。

 その中でも比較的若い女性に起きやすいようだということが判明したので、イギリスでもできるだけ若い方には使わないようになっています。それに準じて日本でも40歳以上の方に使おうということになったのだと思います。

 血栓の原因は、血小板第4因子に対する抗体ができ、その抗体が血液を固める反応を引き起こしていると考えられています。アストラゼネカ製でも、ジョンソンエンドジョンソン製でも起こるという報告があります。たとえば、夏かぜの原因の一つであるアデノウイルスに感染した場合も、稀ですが同じ病態が起きることがわかっていますので、これはベクターであるアデノウイルスの問題なんじゃないかと考えられています。

――血栓症は、どのくらい起こる可能性があるものなのでしょうか。

 頻度としては、50歳以上だと10万人に1人、50歳未満は5万人に1人の割合で、低頻度と言えます。また、これはイギリスのデータなので、日本でも同じ頻度で起こるとは限りません。欧米では肥満の方も多く、肥満だと元々血栓のリスクは高いですから。予想だと、日本ではもう少し下回るのではないかと。

 ただ、実際に血栓症が起きてしまった場合の死亡率は20%程度といわれています。血栓は、脳の血液が流れだす静脈にできるケースが一番問題です。静脈なのになぜ?と思うかもしれませんが、血液が流れ出す場所がないので、血の流れが滞って脳梗塞や脳出血が起きてしまいます。そうなると、亡くなったり重い後遺障害を残す可能性があります。

――アストラゼネカ製のワクチンの予防効果はどのくらいなのでしょうか。

 今イギリスが発表しているデータによると、感染予防・発症予防効果に対しては、アストラゼネカはやはり少し劣ります。ただし、重症化予防に関しては、アストラゼネカもファイザーもそこまで大きな違いはありません。現在流行しているデルタ株でも、どちらも9割以上の重症化予防効果があります。

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 低頻度ではあるが血栓のリスクが報告されているものの、重症化予防効果は既存のワクチン並みというアストラゼネカ製ワクチン。感染の急拡大が続く今、さらなる希望の一手となるか。(AERAdot.編集部・大谷奈央)