大規模接種会場を視察した菅首相(C)朝日新聞社
大規模接種会場を視察した菅首相(C)朝日新聞社

 菅義偉首相の肝いりで東京と大阪に開設された新型コロナワクチンの大規模接種センターで24日、いよいよ接種が始まった。予約システムでトラブルが多発するなど多難な船出だったが、初日は拍子抜けするほど人が少なかった。どんな1日だったか、現場からルポする。

【写真】予約なしで接種した84歳男性が貰った2回目の接種券はこちら

「予約していないけど、来たんだよ」

 こういうのは東京都の23区外の市に住む男性(84)だ。東京の大規模接種センターでのワクチン接種は東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に住む65歳以上の高齢者が対象だ。だが、5月30日までの予約は東京23区に住む高齢者だけが対象だった。

 しかし、男性は午前10時過ぎ、会場にやってきた。居住している市では、地元の大きな病院でワクチンを接種するように案内されたが、予約開始から3日間、電話をかけつづけたが一度もつながらず。結局、予約が埋まってしまった。市に文句を言うと、6月から再度予約を受け付けるという。

 しかし、予約は難しいだろうと考えていた。そんな中、昨日ラジオで24日から大手町で大規模接種をするというニュースを聞き、「これだ」と思い立った。

 ラジオによると、東京駅南口から会場までのシャトルバスが出ているという。詳しい接種会場はわからないが、これで行けると考えた。予約はネットからだが、自分はガラケーしか持っていない。市からもらった接種券と、本人を証明する書類として返納した自動車免許を携え、東京駅へ。

 東京駅まで着くと、目の前でバス一台が行ってしまったが、次のバスがすぐにきた。6分間隔でバスが出ているという。大型の観光バスで何十人も乗れるが、自分も含めて乗客はわずか3人。「3人だけか」と驚きつつも、バスは出発した。

会場前の受付の様子。24日午後5時半だが、人はあまりいない(撮影・吉崎洋夫)
会場前の受付の様子。24日午後5時半だが、人はあまりいない(撮影・吉崎洋夫)

 会場に着くと、会場は人影もまばらで行列もない。緊張感は高まった。予約はしていない。地元で予約しようと思ったができなかったこと、書類は整えて持ってきたこと、しっかりと説明すれば何とか接種してくれるのではないか。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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予約なしであっさり接種