「奥さん、大丈夫ですか?」

「今はICU(集中治療室)で朝5時から働いています。『N95マスク』がなくて、通常のマスクを着用して、感染の疑いがある患者を診断しているんです」

 友人の言う「N95マスク」とは、医療用の高性能マスクのことである。患者から医療従事者への感染を防ぐために必要なものだが、それすら不足しているのが医療現場の現実なのだという。
 
 マスクは高機能かどうかだけでなく、使用する側が置かれている環境と用途を考慮して選ぶべきだと思う。それだけに、感染リスクの低い場所で高性能マスクを使っている人がいるなら、いま一度、見直してほしい。もしかしたら、あなたよりも「N95マスク」を必要としている人がいるかもしれない。

 ウイルスとの戦いはまだまだ続きそうだ。まずは自分の命、そして周囲への気配りを大事にして、優しい気持ちを持ち続けるだけでも十分である。いろいろなものの買い占めが起きているが、マスクに限らず、それを本当に必要としている人への譲り合いの精神を発揮したいところだ。(文/丸山ゴンザレス)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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