フォーカスリングを前後するクラッチ機構でAF/MFを切り替えられるレンズも多い。フォーカスリングに指をかけたまま素早く切り替えられる。写真はパナソニックのLUMIX S PRO 50ミリ F1.4
フォーカスリングを前後するクラッチ機構でAF/MFを切り替えられるレンズも多い。フォーカスリングに指をかけたまま素早く切り替えられる。写真はパナソニックのLUMIX S PRO 50ミリ F1.4

 カメラにオートフォーカスという機能が入って久しい。しかし、撮影者がどこにピントを合わせたいか、カメラにはわからない。カメラのオートに任せきりでは、狙った写真は撮れないのだ。AF/MFの機能の役割を知り、ピントを自在に操りたい。

【写真】プロがマニュアルでピントを合わせた風景写真はこちら

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 そもそも、ピントを合わせるのは被写体の「見たい」もしくは「見せたい」部分を明確に写真として切り取るための行為だ。このツボをしっかり押さえて的確なピントが得られるようになれば構図の中にシャープな被写体像のほかに「前ボケ」や「背景ボケ」の要素を加えた作画も行える。それには被写体までの撮影距離、前背景との位置関係、そして絞り値によりピントが合っているように見える範囲が変化する「被写界深度」の理解も必要だ。

測距点を指定して撮影(写真/宇佐見健)
測距点を指定して撮影(写真/宇佐見健)
オートで撮影(写真/宇佐見健)
オートで撮影(写真/宇佐見健)

 ハッキリ言ってしまうと、全自動オートでのピントの失敗はAFの性能というよりも、カメラがどうピントを合わせるかの知識と意識の不足が原因だ。撮影レンズは目のように瞬時に、ピントを合わせたい対象物を鮮明に見せる仕組みにはなっていない。その都度狙いを定めて、レンズ鏡筒を繰り出したり、内部レンズを移動したりして、被写体の輪郭が鮮明に見えるように調節する必要がある。これを自分の目と手で行うのがマニュアルフォーカス(MF)。カメラが自動で素早く行うのがAFだ。ただし一言でAFといっても、画面内の「どこに合わせるか」「どのように合わせるか」という二つの要素を組み合わせた制御を行っていることをまず理解してほしい。

 AFといっても、画面のどこでもピントが合わせられるわけではない。画像で判断するコントラストAFでは位置はある程度自由だが、位相差AFでは位相差センサーがあるところでしかピントを合わせられない。このピントを合わせられるところを、測距点という。メーカーごとに呼び方は異なるが、複数をまとめて使うのか、単独で使うかによって、ピント検出を行う範囲を「AFエリア」や「AFフレーム」「AFターゲット」などと呼ぶ。ほぼ全てのカメラは工場出荷時の初期設定で、使用する測距点をカメラが自動判断するオートモードに設定されている。

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「自動選択オート」を過信しない