次の5枚の写真も24~70ミリで連続して写したもので、(1)から(5)は時系列に並べています。


(1)望遠端70ミリを生かして記念写真を撮る人と街の背景を圧縮して撮影(撮影/大西みつぐ)
(1)望遠端70ミリを生かして記念写真を撮る人と街の背景を圧縮して撮影(撮影/大西みつぐ)

 (1)は、望遠側の70ミリで線路上で記念撮影をしている人たちと背景の町並みとの距離を圧縮して写しています。

(2)広角端24ミリで線路の奥行き、パースペクティブを強調しています(撮影/大西みつぐ)
(2)広角端24ミリで線路の奥行き、パースペクティブを強調しています(撮影/大西みつぐ)

 (2)は、線路が奥に伸びるパースペクティブを撮りたいな、ということでズームリングを思い切り広角側に回して24ミリで撮りました。

(3)画面内にいくつも目を引くポイントがあり、それらを等しく35ミリで撮影(撮影/大西みつぐ)
(3)画面内にいくつも目を引くポイントがあり、それらを等しく35ミリで撮影(撮影/大西みつぐ)

 (3)は、気球を上げようとしている家族がいて、右にはそれを背景に記念写真を撮る人と、目を引くポイントがいくつもあります。それらを全部35ミリで少し寄ってバチバチ撮っています。

(4)浮かび上がろうとする気球を24ミリで高いところから写しています(撮影/大西みつぐ)
(4)浮かび上がろうとする気球を24ミリで高いところから写しています(撮影/大西みつぐ)

 (4)は、その勢いで、ちょっと高いところに上り、飛び立つ寸前の気球を見下ろし、広い画角の24ミリで撮っている。

(5)舞い上がった気球を焦点距離を変えずに体を引いて撮りました(撮影/大西みつぐ)
(5)舞い上がった気球を焦点距離を変えずに体を引いて撮りました(撮影/大西みつぐ)

 (5)は、この雑然とした感じの中で気球が舞い上がっていくところを撮りたくて、焦点距離を変えずに思い切り引いて背景をたくさん入れて撮っています。

 このように、ズームレンズは焦点距離を自由に変えられるので便利です。しかし、それに慣れてしまうと、ズームリングを回して画角を変えていくだけになってしまい、特にアマチュアの人の場合、割と同じような写真しか出来上がってきません。

 単焦点レンズは広く撮るには下がるしかないし、大きく写すには近づくしかない。それ一本で押したり引いたりしなくては撮れないから、被写体に対して、撮り手の潔さが出てきます。

 ぼくはスナップ写真の入門レンズとしては標準ズーム、それと28ミリか35ミリくらいの単焦点レンズをおすすめします。

 35ミリくらいの画角は肉眼の視野に近く、スナップに非常に適した焦点距離です。極端なゆがみも出ません。28ミリはさらに画角が広いため、特に動いて撮る場合は、ピントがラフでも被写界深度の深さでカバーしてくれます。

 でも、実際には標準ズームを単焦点レンズにつけ替えて撮る人はあまりいないでしょう。それだったら、単焦点レンズ一本だけで撮ってはいかがですか、とお勧めしたい。

 ズームレンズは、自分の体の動き、プラス焦点距離が細かく変わることによって、より画面に変化が出てきます。でも、みなさんなかなかそうしない。たいていは手元でズームリングを動かしておしまいです。

 単焦点レンズは、もう体を動かすしかない。レンズの画角を頭の中で思い出して反芻して、能動的に現場で動くことのメリット、それを大事にするべきです。

写真と文=大西みつぐ

※『アサヒカメラ』2019年11月号より抜粋