スタンドから写真を撮るなら、トライライン近くの席が向いている。通常は試合を俯瞰できる両サイドが高額の席だが、サイドから狙うのではどうしても距離が遠くなる。撮りたいチームや選手が決まっているなら、攻めてくる方向、つまり相手チームのトライライン側から狙うのがベストだ。トライの瞬間だけでなく、歓喜の表情など、いい瞬間を撮れる確率が高くなる。

 席はできるだけ前列がいい。後列、つまりスタンドの高い位置にいけばいくほど、背景が芝生になってきれいではあるものの、選手の顔が見えづらくなる。やはりできれば低い位置から表情を撮りたい。

 ちなみに、もしも撮影する場所を選べるのなら、背景に不必要なものが写る場所よりは、すっきり落ちるところを探すと、選手が浮きあがって、美しい写真になる。僕は、声がよく出て、ボールが回っているときは、トライが増える可能性に賭けてゴール裏、そうでないときはサイドライン脇から狙うなど、試合内容によって撮影ポジションを変えている。

■トライ後、試合後も狙い目

 最後にひとつ、忠告を。トライ後に周囲を見回すと、多くのカメラマンが下を向いている。トライの瞬間が撮れたかどうか、バックモニターをチェックしているのだ。でも、画像確認は後でもできる。トライ直後は、ガッツポーズや、選手が肩を抱き合う様子など、人間味のあふれる、ドラマチックな写真が撮れる最高のタイミングだ。そこまできっちり追おう。プレー終了後の、選手たちの自然な表情をおさめるのもおすすめだ。

トライの直後や試合後は、表情にも動作にも選手たちの喜びの感情があふれ出す、絶好のシャッターチャンス。画像チェックに夢中になって撮り逃さないようにしたい(撮影/水谷たかひと)
トライの直後や試合後は、表情にも動作にも選手たちの喜びの感情があふれ出す、絶好のシャッターチャンス。画像チェックに夢中になって撮り逃さないようにしたい(撮影/水谷たかひと)

 いろいろと伝えてきたが、日本で大きな国際スポーツの大会が開催される機会は少ない。一生に一度のチャンス、深く考えず、会場の雰囲気をおさめるだけでもいい。何よりもまず、試合を楽しもう。

○水谷たかひと(みずたに・たかひと)/1968年、東京都生まれ。冬季オリンピック、モータースポーツ、サッカー、ラグビーなど、第一線のスポーツフォトグラファーとして活動を続けている。2012年から、ラグビートップリーグ「キヤノン イーグルス」のオフィシャルフォトグラファー。9月13日~10月8日、キヤノンSタワー(東京都港区)で「キヤノン イーグルス写真展2019 Photo by Takahito Mizutani」開催。

※『アサヒカメラ』2019年9月号より抜粋