ドローンがとらえた飯田線“秘境駅”の意外な実像 (2/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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ドローンがとらえた飯田線“秘境駅”の意外な実像

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武田元秀dot.#鉄道

田本駅のホームは、この狭さ(提供/『旅と鉄道』編集部)

田本駅のホームは、この狭さ(提供/『旅と鉄道』編集部)

 田本の空撮による光景は、飯田線の秘境駅巡りをしたことがある者にとって、もっとも意外なものだったに違いない。田本のホームはトンネルに挟まれた急斜面にあり、人ひとりがやっと歩けるほどの狭いホームの頭上のコンクリート擁壁から巨大な岩塊が張り出し、反対側には天竜川が流れるばかり。「なぜこんなところに駅が?」と、必ずといっていいほど感じるほどの、すさまじい光景を見せる。

 ところがドローンから見ると、大きな山塊の中腹にわずかに確認できるホームと線路の直上には平坦地が広がっていて、それなりの規模の集落もある。最も線路寄りの高台には、泰阜村立泰阜小・中学校の校舎群も建っている。空撮写真をよく見ると、駅の後方から斜面を巻いて集落に向かっている道らしき木々の切れ目の存在も確認できる。実は、飯田線の前身である三信(さんしん)鉄道が建設された際、ここに駅を設ける予定はなかったという。ところが田本集落の人たちの強い要望により、「請願駅」として設置が認められたのが田本駅だった。地形を見る限り、飯田線の線路を集落がある高台まで引き上げることは不可能だったろう。ホームの周囲に何もなくとも、田本はけっして秘境駅ではなかったのだ。
『旅と鉄道』の表紙を飾った1枚。田本駅の上には、集落が広がり学校があった(撮影/林 明輝)

『旅と鉄道』の表紙を飾った1枚。田本駅の上には、集落が広がり学校があった(撮影/林 明輝)

■「タイムリーなショットをとらえる緊張感」

 飯田線6秘境駅のドローン撮影にあたった林さんは、長野県小谷(おたり)村の委託を受けてJR大糸線とその沿線を撮影し続けるなど、鉄道関連の取材経験も豊富なベテラン写真家だ。国土交通省の包括申請許可を受け、DID(Densely Inhabited District=人口集中)地区や空港付近、150m以上の高度など、航空法による禁止制限のない区域であれば「基本的には1年365日、個別に許可を得なくてもドローンの目視外・夜間の飛行も可能」(林さん)だという。もちろん今回の撮影場所・条件はすべて、それに含まれない。

「飯田線の秘境駅は初めてでしたけど、とても楽しく撮影できました。ただ、列車が駅に到着する時間が限られているので、タイムリーなショットをとらえるのに、ほどよい緊張を感じましたね」

 林さんは6つの駅とも、クルマと歩きを駆使して丸二日をかけて、ホームに近い鉄道会社の敷地外の草むらなどからドローンを飛ばした。ただし田本駅だけは立地上それが難しく、直上に位置する泰阜小学校の教頭先生から特別な許可を得て、校内の外れで離着陸したという。

「ドローンの離着陸は、人そのものや中に人がいる対象物から30m以上離れていなければなりません。田本では小・中学校の校舎や校庭から離れた裏手のプールのさらに奥の空き地から、飛ばしています」

 ドローンを使っての撮影については、機会があれば、また別の路線でも経験してみたいと、林さんは語る。

「さまざまな視点から、鉄道シーンを楽しめるのは魅力ですから。ただ、プライバシーの問題もあり、とにかくマナーを守ることは必須です」



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