※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 雨の日や台風の前に頭痛がする、気分が悪くなる――これらの症状の総称を「気象病」と呼ぶ。気象病の原因にはよく低気圧の影響が指摘されるが、「実は寒暖差のほうが体に与える影響が大きい」と医師は言う。エルニーニョ現象が発生した場合の影響についても聞いた。

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 頭痛やめまい、疲労感のほか、気分も落ち込みやすくなる梅雨の時期。こうした天気の変化によって引き起こされる身体的・精神的な不調の総称を「気象病」と呼ぶ。

「気象病の主な原因は(1)気温の変化、(2)気圧の変化、(3)湿度の三つ。特にこの3要素がそろいやすいのが梅雨の時期です」

 こう話すのは、上本町わたなべクリニック(大阪市)院長の渡邊章範医師。低気圧の接近に伴い雨が降り、気温変化が大きく、さらに湿度も上がる。梅雨は気象病を招く三つの条件がそろいやすい時期なのだ。

上本町わたなべクリニック(大阪市)院長の渡邊章範医師
上本町わたなべクリニック(大阪市)院長の渡邊章範医師

 では、このとき体の中でどのような変化が起きるのか。

「国際基準として定められた気圧は約1013ヘクトパスカル(hPa)、人間の体には約16トンの圧力がかかっています。なぜ人間がこの重さにパンクしないかというと、 空気が人間を押す力と、人間の体が空気を押す力の均衡が取れているから。しかし低気圧が来ると、相対的に人間の体が空気を押す力のほうが高くなるため、耳の奥にある空洞(鼓室)、鼻にある副鼻腔などの圧力が強くなり、頭痛やめまい、血圧の乱れを起こす……というのが基本的な気象病のメカニズムです」(渡邊医師)

 こう聞くと、低気圧が諸悪の根源のように思える。しかし渡邊医師によると、最も体に悪影響を及ぼすのは寒暖差。特に、一日の気温差が10度以上ある日は要注意で、心筋梗塞などさまざまな病気を引き起こすという。

■気温・気圧の変化で心筋梗塞リスクが10%以上増える

「心筋梗塞の発症率と気温・気圧差は密接に関係しています。心筋梗塞は冬に多いイメージがありますが、実は季節はあまり関係ありません。心筋梗塞のリスクは一日の気温差が10度以上あると12%、気圧が10上下すると11~12%増加するといわれています」(同)

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たかが寒暖差と甘く見ないこと