神奈川県海老名市にある「エホバの証人」日本支部
神奈川県海老名市にある「エホバの証人」日本支部

宗教団体「エホバの証人」が、こども家庭庁に「教団として児童虐待を容認していないことを信者に周知した」と報告したことを受け、元2世信者らが22日、会見を開き、周知内容が極めて不十分との声明を発表。元2世信者らは子どもへの「むち打ち行為」「輸血拒否」を教団が認めていないなど、周知した文書の内容の欠陥を指摘し、教団にもメールで声明を送った。

【顔出しで会見をした元2世信者たち】

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 エホバの証人をめぐっては「輸血拒否」や、「むち打ち行為」など、子どもに対する虐待行為が繰り返されてきた疑いが取り沙汰されている。

 元2世信者らでつくるグループ「JW児童虐待被害アーカイブ」が2021年9月にSNSを通じて実施したアンケートでは、幼少期に人目がある中で下着を脱がされて親にむち打ちをされたことや「周りの人たちに体を押さえつけられた」「泣き叫ぶとむち打ちの回数が増えた」などの回答があった。

 より痛みが強くなるように加工した道具が使われたり、親同士でどの道具が効果的か情報交換も行われたりしていたこともアンケートで明らかになった。

 教団は今月、こども家庭庁に対し、「教団として児童虐待を容認していないことを信者に周知した」と説明した。

 だが、元信者らが問題視するのは、教団が説明する「周知」に当たる信者に配布した文書の内容だ。

 22日に会見した元2世信者の綿和孝さんと元3世の夏野ななさんは、厚生労働省が公表している「宗教等に関する虐待対応Q&A」の内容が文書の中で信者らに周知されていないことを問題視する。

 綿和さんは、「ハルマゲドンで滅ぼされる、と脅すことや布教活動の強制、進学の否定など、Q&Aで児童虐待だと明記されていることが記載されていない。今後も2世、3世らが宗教の強制により苦しむことが想定される」と批判した。

 「むち打ち」について、文書では「子供のしつけ」と題した箇所で、

「エホバの証人は児童虐待を容認していません」「『ものみの塔』2014年7月1日号10ページにはこうあります。『聖書中の懲らしめ』という語は、……主に、教え諭すことや正すことに関連しており、虐待や残酷さとは全く関係がありません」と記してある。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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