昨年6月の世界選手権ブダペスト大会では吉田萌(左)のパートナーを務めた比嘉もえ(右)
昨年6月の世界選手権ブダペスト大会では吉田萌(左)のパートナーを務めた比嘉もえ(右)

 史上最年少の14歳でアーティスティックスイミング(以下AS)の日本代表入りを果たした比嘉もえは、15歳となった今夏、福岡で行われる世界選手権に臨む。

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 171cmと日本代表女子選手の中では一番の高身長で手足も長く、恵まれた体を持つ比嘉は広島出身。父は、プロ野球の広島東洋カープでプレーした寿光さんである。小学校2年生の時にAS広島(当時の名称は広島シンクロクラブ)の体験会でASに出会い、競技を始めた。

 比嘉がA代表(日本代表のトップチーム)入りを果たしたのは、東京五輪が終わり新体制に移行していくタイミングだった2021年秋である。ジュニア世代の選考会で1位になり、特別推薦で出場したA代表の最終選考会でも7位に入って、2022年世界選手権ブダペスト大会の代表に選ばれている。

 昨年6月に行われた世界選手権ブダペスト大会のデュエットでは、当初は吉田萌のパートナーを務める予定だった安永真白に怪我があり、比嘉が抜擢された。吉田・比嘉組はテクニカルルーティン(以下TR)のみに出場、4位に入っている。また比嘉はチーム種目にも出場しており、TR・フリーコンビネーションで銀メダル、フリールーティン(以下FR)で銅メダルを獲得した。

 また同年8月にケベック(カナダ)で行われた世界ジュニア選手権で、比嘉はソロのみにエントリーし、TR・FRともに金メダルを獲得している。TVアニメ『ノラガミ』の曲を使ったFRでは、緊張感のある音楽を体現するシャープな泳ぎで強い印象を残した。非五輪種目であるソロでは、各選手の個性や能力が浮き彫りになる。ジュニアでは世界最高峰の大会で陸上動作から独特の存在感を醸し出すソリスト・比嘉には、大器の予感が漂っていた。比嘉には、芸術スポーツの逸材が共通して持つ華がある。

 今季のワールドカップ・デュエットに、比嘉は安永とのペアで出場している。ワールドカップでは、カナダ大会TR3位・FR4位、フランス大会TR2位・FR2位という結果だった。世界選手権福岡大会でメダルを獲得するためには、もう一歩前進する必要があるだろう。

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パリ五輪へ向けての演技に注目