※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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歯はちょっとした刺激にも敏感で、かみ合わせの変化も感じやすい。一方、中にはかみ合わせにまったく問題がないのに、異常を訴える患者もいる。近年、そのメカニズムや適切な対処法が徐々にわかってきた。

【図解】かみ合わせの違和感の原因、TCH(歯列接触癖)とは?

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 上下の歯をかみ合わせたときに「一部の歯が高くて気になる」「歯がどこかでひっかかって気持ち悪い」など違和感が生じることがある。その多くは詰めものやかぶせものが高すぎることなどが原因だが、中にはかみ合わせにまったく問題はないのに、こうした違和感を訴える人がいる。

 徳島大学病院かみあわせ補綴科科長の松香芳三歯科医師は、「歯科医が一番、治療に難渋するケースです」と話す。

 考えられる原因として大きく二つがある。一つ目は歯ぎしりやくいしばり、TCH(Tooth Contacting Habit=歯列接触癖、詳細は後述)など、「歯の接触が続くこと」、もう一つは「精神的な不調」によるものだ。両者があわさっているケースも多いという。

■歯の接触が続くと脳が興奮する

 一つ目の「歯の接触」について、松香歯科医師は、

「安静時は上下の歯が接触していないのが普通なので、歯の神経は眠っている状態です。歯をかみしめることが続くと神経が興奮して、脳での情報処理が正しくできなくなるために、かみ合わせの違和感が生じやすくなるといわれています」

 夜間の歯ぎしりは、歯の接触の代表例の一つだ。朝起きると歯が痛かったり、家族の話から、歯ぎしりをしているかどうかが推察できる。

 この場合はマウスピース(ナイトガード)が有効だ。歯科医院で型取りをおこない作成するオーダーメイド(一般的には上顎のみ)で健康保険が使える。

「マウスピースを装着すると強くかめなくなるので、脳の興奮が減ります。マウスピースでもよくならない場合は、歯ぎしりを検知する筋電計をすすめることもあります」(松香歯科医師)

 ある種の筋電計は睡眠中のこめかみの上に貼ったパッドから、側頭筋の動きを検知する。歯ぎしりをすると側頭筋が強く動き、弱い電気刺激が発生する。これにより、目は覚めない状況下で、歯ぎしりをやめるようになるという。

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歯を接触させる癖が要因に