お笑いトリオ四千頭身の後藤拓実
お笑いトリオ四千頭身の後藤拓実

 数年前、「お笑い第七世代」と呼ばれる若手芸人たちの爆発的なブームがあった。20代中心の何組かの芸人が新しい世代として脚光を浴びて、「第七世代」と名のつく雑誌の特集が組まれたり、さまざまなバラエティ番組の企画が行われたりした。彼らはすさまじい勢いでテレビの世界を席巻していった。

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 当時、そんな第七世代の代表格と言われていたのが霜降り明星である。彼らは2018年に先輩芸人たちを抑えて史上最年少で『M-1グランプリ』優勝を果たしたことで、一気に時代の寵児となった。しかも、霜降り明星のせいやは「第七世代」という言葉の発案者でもある。

 しかし、いま改めて振り返ってみると、第七世代ブームの本当の意味での中心的な存在は四千頭身だったのではないかと思う。一時期の彼らのもてはやされ方や人気の過熱ぶりはすさまじいものだった。

 タレントの人気というのは株価のようなもので、一時的に高値がつくことがあっても、長い目で見るとその人たちの本来の実力に見合った適正なところに落ち着いていくものだ。そういう意味では、本来の価格からの値上がり幅が最も大きかったのは四千頭身だったと言っていいのではないか。

 お笑いトリオ・四千頭身の都築拓紀、後藤拓実、石橋遼大は、第七世代と呼ばれるほかの芸人たちよりもさらに年下であり、芸歴も浅かった。

 明るい都築と物静かな石橋のボケに対して、後藤がボソボソと小声でツッコむ「脱力系漫才」を演じていた彼らは、いかにも「今どきの若者」然としたキャラクターを持っていた。そこが女性や同世代の若者から熱狂的に支持された理由であり、上の世代の大人にはあまりウケが良くなかった理由でもある。

 四千頭身の後藤は、たくさんテレビに出るようになってから、猛烈に成金アピールを始めた。高級タワーマンションに住み、高級車を乗り回し、「成功者」として優雅な生活をしていることを誇らしげに語った。そういう姿を見せることで、後輩芸人に夢を与えたいという思いがあったのだという。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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