厚生労働省イクメンプロジェクト駒崎弘樹座長(写真/ワーク・ライフバランス)
厚生労働省イクメンプロジェクト駒崎弘樹座長(写真/ワーク・ライフバランス)

 昨年の出生数が80万人を割り込んだ衝撃を受け、少子化対策を巡る議論が国会で熱を帯びている。3月17日、岸田文雄首相は記者会見で、男性の育児休業の取得率の目標を2025年度に50%、30年度に85%に引き上げることを明らかにした。一方、4月1日から改正育児・介護休業法の施行により、従業員1千人を超える企業は、男性従業員の育休取得率を公表することが義務づけられる。それに先立ち、15日、「男性育休推進企業実態調査2022」の結果発表が厚生労働省で行われた。そこで繰り返し指摘されたのは育休取得率100%の企業でも取得日がわずか数日の「とるだけ育休」になっていることが少なくない実態だ。

【取得率は100%でも取得日数が…「とるだけ育休」の実態を示したグラフはこちら】

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「男性育休の取得率100%の企業でも取得日数には数日から約150日までと、すごくばらつきがあります。つまり、取得率が高いからといって取得日数が長いというわけではない。取得率が100%でも取得日数がともなわない『とるだけ育休』が存在することがうかがえます」

 厚生労働省イクメンプロジェクトの座長で、認定NPO法人フローレンス会長の駒崎弘樹さんは、そう語った。

 今回の調査結果は、男性従業員の育児休業取得を推進する141企業・団体の回答を分析したものだ。2021年度の全国の男性育児休業平均取得率は13.97%(厚労省調べ)なのに対して、今回の調査では59.7%(21年度)。企業全体と男性育休推進企業とでは取得率に大きな差があることを感じた。

 男性の育休の取得率に大きな伸びがあったこともわかった(有効回答数92企業・団体)。20年度は52.0%だったが、22年度は76.9%と、直近の2年間で24.9ポイントも増加した(22年度は回答時点での見込みの数値。以下同)。

 一方、平均取得日数については大きな変化がなく(有効回答数83企業・団体)、20年度は42.2日、21年度は35.4日、22年度は40.7日だった。

 これらは、何を意味するのか。

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金融・保険業界は取得率が高いものの…