シリコンバレー銀行が破綻。米史上2番目の規模(写真/アフロ)
シリコンバレー銀行が破綻。米史上2番目の規模(写真/アフロ)

 3月10日、米銀行シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻(はたん)した。同行の株価下落が始まってからわずか1日だった。これを受け、12日に米財務省などは「すべての預金者を保護する」旨のプレスリリースを公表し、週明け13日、バイデン大統領も「預金は全額を保護する」と演説した。それでも不安は消えず、預金を引き出そうとする人たちがSVBの前に長い列をつくった。「そこにSNS時代の銀行破綻の怖さがある」と日本総合研究所調査部金融リサーチセンターの野村拓也主任研究員は指摘する。

【写真】SNSで拡散…銀行にできた長い行列

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 なぜ、SVBは経営破綻したのか。その背景を野村主任研究員はひととおり説明した後、SNSの影響について、こう漏らした。

「SVBの経営に不安を持つ人々の中で、ある特定の意見がSNSによってあっという間に拡散し、既成事実のように扱われ、本当に銀行破綻にまで突き進んでしまう。その意見が本当の情報に基づいたものなのか、検証しない人が多いですから。そこがSNSの怖いところです」

 SVBの経営は危ないのではないか――そんなうわさが怒濤(どとう)のごとく広まったのは9日のこと。預金が一気に引き出された。SVBは資産売却を実施して流動性(取引のしやすさ)を確保しようとしたものの、それにともない損失が発生したことを公表したこともあり、預金流出に拍車がかかった。その翌日、SVBは経営破綻した。

「ある意味、ものすごくトラディショナルな銀行破綻のパターンといえます。逆に言えば、これまでもうわさが広まらなければ、つぶれるはずのなかった銀行は山ほどあります。かつて、うわさは口づてでしたが、今はSNSによって早く伝わります。なので当局も早く動かなければならない。対応をゆっくりと検討している余裕はない。それですぐに預金を全額保護したわけです」

ロビンフッド問題

 ところが、12日、米連邦準備制度理事会(FRB)と米財務省、SVBの預金を管理下に置く米連邦預金保険公社(FDIC)が共同声明で預金の全額保護を表明したにもかかわらず、人々は銀行の前に列をつくった。

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SNSでは一部の情報が切り取られ…