安浪:ずっと従来型の授業をされてきた先生の中にも、探究的授業がうまい先生はいるのでしょうか。

矢萩:はい、いらっしゃいます。各学校の探究型授業におけるエース級の先生たちが模擬授業や講演をしたり、事例をシェアしたりという機会も増えているので、他の学校の先生でも勉強に来て影響を受け合うような場も増えてきました。そのような中で、向上心の高い先生は探究に目覚めたりします。「自分がやりたかった教育って、これだったんだ!」みたいに。特にこの数年、コロナ禍で探究心に火がついて、ナビゲーターとしてデビューする先生も出てきましたね。

■活動期間より本気度が大事

安浪:そういう探究的な活動はやはり中高一貫校で一つのことをずっと掘り続けてやれる環境が理想なのでしょうか。

矢萩:総合型を選択している生徒たちのPRや動機を見ると、芸術系・スポーツ系をのぞいて、小中学生の頃から夢を持ってやっていたというケースはそれほど多くありません。高校生になってからやりたいことを見つけ、活動をはじめたという人が大半ですね。そう考えると、もちろん中高一貫の方が余裕を持っていろいろな体験ができたり、好きなことを見つけたりできる可能性はありますが、必ずしも中高一貫校でないと活動期間が確保できないということでもないと思います。期間よりも本気度が大事です。だから、そういう心配はあまりしなくていいかなと思いますね。

安浪:総合型選抜になってから、以前のA O入試より学力面も見られるようになった、と聞きますが、課外活動メインで参考程度に成績を見る大学、逆に学校での成績や英検など学力面をしっかり見る大学、さまざまなんでしょうね。

矢萩:完全に大学によると思います。僕自身、大学というのは教授が面接していいと思ったら私の責任で入学させます、っていうスタイルが一番理想的だと思っています。海外だったらそれがスタンダードなんですけど、日本はほぼないですね。日本の場合は教授会も厳しいし、複数の人が納得しないと合格させられないケースがほとんどです。つまり、「この学生を合格させたのは誰だ?」となっても、「私が責任もって成長させます」みたいなものがなく、「責任は学校がとります」となる。みんなが納得した人しか合格させないので、濃い師弟関係ができにくいこともあって、ここは日本の大学教育の残念なところかなと思いますね。

NEXT総合型では何を評価されるのか?
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