■「現在の能力」より「成長できそうか」を評価
安浪:そうなると、総合型選抜って具体的に生徒のどのような部分を見られていると思いますか?
矢萩:学校によって違うと思うのですが、僕が知っているある大学の教授の話ですと、こういう学生が来たらうちの学部を出たときにこういうふうになりそうだよね、っていうビジョンのようなものが共有できるかどうかが大事、ということでした。今現在の能力を問うのではなくて、方向性がその学校に合っているかどうか、その学部の学びで成長できそうだと感じるか、といったところを見ているということでしょうね。つまり大学が求める学生像、つまり「アドミッションポリシー」にマッチするかどうか。これは総合型入試の一番の意義です。
安浪:今回のご質問に戻ると、小3のお母さんが大学受験のことに興味があるっていうのはいいと思うんですけれど、まだ相当先ですよね。今後大学入試の方法もさらに変わっていく可能性がありますよね。
矢萩:約10年後ですから全然わからないです。そもそもわかっていることだけ話しても10年後に学生の数が減少する問題は避けて通れないんです。地域によっては大学全入時代が来ます。ただあまりそれを皆が声高に言わないのは、今言ってしまうと、塾業界も大学業界も総崩れしてしまうので、とりあえずアンタッチャブルな空気にしているんです。とはいえ、保護者としては認識しておくべきだと思います。ですから、あまり今の価値観で決め打ちはしないほうがいいよね、ぐらいのマインドは持っておいたほうがいいと思います。
安浪:よく矢萩さんが「進路もキャリアも逆算するのではなく積み上げていくものだ」と仰いますが、そもそも受験に逆算自体が全く通用しない時代になってきたということですよね。「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、今さらながら改めて「何のために勉強をするのか」「何ために受験するのか」の軸を各家庭、当事者である子どもが持っておく必要性を強く感じます。
(構成/教育エディター・江口祐子)