「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さん。今回は、「きょうだいの比較」がテーマです。
【マンガ】中学受験で合格したのに…「やっぱり地元の公立中に行く」 息子の告白に両親が出した“答え”とは?(全35ページ)偏差値なんて子どもの一部分でしかない
安浪:おそらくですが、親御さんはお兄ちゃんに対して「こんな難しい問題よく解けたね」とか「今回のテストはすごかったね」といった声かけをしていたと思うんです。同じように、弟さんの「いいところ」も見つけて、ちゃんと口に出して褒めてあげるだけでいいと思います。それは勉強だけでなく、性格面でもいいし、お手伝いなど日常のことでもかまいません。どうしても勉強面にフォーカスしてしまいがちですが、それ以外にも子どもにはそれぞれ良いところがある。それを自然に伝えてあげるだけで十分だと思います。
矢萩:同じ評価軸で比べようとするから難しく感じてしまうんですよね。そもそも子どもを評価すること自体、あまりいいことだとは思いません。評価するにしても、人によって評価の軸を変えるのは本来当たり前のことなのに、受験になるとどうしても「偏差値」というものさしで揃えようとしてしまう。
安浪:偏差値なんて、子どもの一部分でしかありませんよね。
矢萩:うちの塾にも似たようなご家庭がありました。お兄ちゃんが最難関校に通っていて、弟は今年中堅の私立校に進学したんです。でも、お母さんの葛藤がものすごくて。弟さん自身は進学先をとても気に入っていたので、本来なら何の問題もないはずなんですが、お母さんが「つい比べてしまって、不安になってしまう」と最後まで苦しんでいました。頭では「こんなことで悩むべきではない」と分かっていても、感情がついていかない。だから僕も、「弟さんは発想力もあるし性格もいい。本人がその学校に行きたいと言っているんだから大丈夫ですよ」と定期的に声をかけるようにしていました。せっかく本人はポジティブに、彼なりに頑張っているのに、何かの拍子で爆発してしまうことは避けたかった。お兄ちゃんと比べてしまう自分がいることを、お母さん自身がメタ認知できている分、よけいに苦しかったのだと思います。
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