中日・石川昂弥(左)と西武・渡部健人(右)(写真提供・中日ドラゴンズ/埼玉西武ライオンズ)
中日・石川昂弥(左)と西武・渡部健人(右)(写真提供・中日ドラゴンズ/埼玉西武ライオンズ)

 2年連続の最下位からセ・リーグ連覇を達成したヤクルト。その中心と言えばやはり令和初の三冠王に輝いた村上宗隆になるだろう。昨年チームはリーグトップの619得点を記録しているが、ここから村上のマークした134打点を引くと485得点となり、これはリーグ5位の数字となる。実際はそんな単純計算にならないことは確かだが、1人の選手の存在がチームに与える影響の大きさを改めて示したことは間違いないだろう。

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 そして1人のスーパースターの出現は球界全体にも大きな影響を与えることになる。村上がレギュラーを獲得して36本塁打を放った2019年以降、明らかに強打者タイプを上位で指名するケースが増えているのだ。村上ほどの打者はそうそう簡単に出てくるものではないが、若きスラッガーがいるのといないのとではチームの将来は大きく変わってくることは間違いない。では今年以降ブレイクが期待される和製大砲候補としては、どんな選手がいるのだろうか。主に上位指名でプロ入りした選手を中心に探ってみたいと思う。

 高校卒の選手で、プロ入り時点で最も評価が高かったのは石川昂弥(中日)だ。この年は佐々木朗希(ロッテ)、奥川恭伸(ヤクルト)という高校野球の歴史に残る投手がいたにもかかわらず、3球団から1位指名を受け、地元中日が当たりくじを引き当てている。ただ、これまでの3年間を振り返ってみると、期待通りとは言えないのが現状だ。出世の大きな妨げとなっているのが故障である。2年目の2021年は左手首に死球を受けて骨折して長期離脱。昨年は初めて開幕一軍入りし、5月までに5本塁打を放つなどブレイクの兆しを見せたものの、走塁の際に左膝前十字じん帯不全損傷の大けがを負い、残りのシーズンを棒に振っている。

 このキャンプでも回復途上ということで二軍スタートとなっているが、順調に復帰したとしても高橋周平が今年はサードで勝負すると言われており、すんなりレギュラー定着とはいかない可能性が高い。膝の故障明けということもあって、どこまで動けるかが心配ではあるが、チーム事情を考えるとセカンドで勝負するというのも一つの選択肢ではないだろうか。長打力不足がチーム最大の課題ということを考えると、高橋と石川を併用できた方がプラスは大きいはずである。高校時代からハンドリングとフットワークには定評があっただけに、まずは膝の状態を万全にしてぜひセカンドにも挑戦してもらいたい。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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